投資規模が大きい「インフラストラクチャー投資」
インフラストラクチャー投資の始まりは、1990年代英国やオーストラリアでの公共事業の民営化案件でした。
インフラストラクチャーは、経済的インフラと社会的インフラに大別されます。経済的インフラには、輸送施設(有料道路、橋、トンネル、空港、港湾、鉄道等)、エネルギー(発電・送電、ガスの供給・貯蔵、上水道・下水道・排水処理、原油の探鉱・採掘やパイプライン)、その他施設(衛星、通信、駐車場等)があります。
一方の社会的インフラには、教育機関、病院、刑務所、公営住宅等が含まれます。
投資形態は株式や債権等への直接投資と共同投資、信託やファンド・事業組合を経由した間接投資があります。また、ファンド・オブ・ファンズの形式もあります。
インフラストラクチャー投資は不動産投資に比較して、一案件への投資規模が大きく、運営期間が長く安定的なキャッシュフローが期待できます。そして、価格変動は小さい傾向があります。
ただし、種別によってキャッシュフローの安定性は異なり、「社会的インフラ>エネルギー>輸送施設>その他施設や再生可能エネルギー」の順になると言われています。
留意点として、景気変動は受けにくいのですが、法規制の影響や施設の陳腐化リスクがあります。投資期間が非常に長く流動性には十分な配慮が必要です。
投資スタイルとしては、インフラの開発案件に投資するグリーン・フィールドと、既存のインフラへの投資を行うブラウン・フィールドがあります。前者はプライベート・エクイティ的な投資であり、安定的なキャッシュフローを生むまでのリスクがありますが、キャピタル・ゲインも狙えます。後者はすでにキャッシュフローを生んでいるのでリスクは低位です。
また、エネルギー投資ではバリュー・チェーンのどの段階に投資するかでも特性が分かれます。探査、開発や採掘を行うアップストリーム、精製、備蓄、輸送を行うミドルストリーム、卸売、小売を行うダウンストリームへの投資があります。
アップストリームは、政策、経済環境や需給に左右されるため、高リスク・高リターンの傾向があります。
ミドルストリームである貯蔵施設やパイプラインは、資源価格や景気に左右されにくく、原油や天然ガス生産者と貯蔵量、輸送量に応じた手数料の長期契約によって相対的に安定したキャッシュフローが期待できます。
イェール大学の「2016年運用報告書」では、天然資源(石油、天然ガス、森林、採掘)投資に対する期待リターンは6.5%でリスクは24.5%、不動産の期待リターンは5.5%でリスクは15%と想定されています。
天然資源への投資には、金や銀といった貴金属・鉱産物系、石油や天然ガスなどのエネルギー系、大豆やトウモロコシなどの農産物系があります。
投資の形態としては、ETF(ExchangeTradedFund)や先物、対象によってはインフラストラクチャー・ファンドがあります。