(※写真はイメージです/PIXTA)

上場していない企業の株式(プライベート・エクイティ)投資は、信用や流動性などの不確実性(リスク)が高く、「誰もが気軽にできる投資」ではありません。一方、流動性リスクによるプレミアムの上乗せ等、高いリターンも期待できることから、長期投資の手段として挙げられます。IT、バイオベンチャー等、世界を変える可能性を秘めた「未来のユニコーン企業」を発掘できるかもしれないプライベート・エクイティ投資について、特徴や具体的なスキームを詳しく解説します。※本連載は、川原淳次氏の著書『大学・財団のための ミッション・ドリブン・インベストメント』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

条件次第で法人税免除も…上場「MLP」投資

エネルギー系を中心として、REITと同様なスキームとして上場MLP(Master Limited Partnerships)への投資も可能です。

 

MLPは1980年代に米国で誕生した共同投資形態で、総所得の9割以上を天然資源の探査・採掘・精製・運搬・備蓄等から得ていれば、原則法人税が免除されます。

 

米国大学基金では、従来、プライベート・エクイティ投資の一部として、インフレ連動・伝統的資産との分散を理由に、キャッシュフローを生む石油や天然ガス、森林、農地への投資を早くから手がけていました。

 

ESGの観点からも注目される「森林・農地投資」

森林・農地投資は、育成した木材や穀物などの売却収入や土地の賃貸収入が収益の源泉です(川原、2011)。新興国を中心とした人口増加と食糧不足、旺盛なエネルギー需要と温室効果ガス抑制が期待される中、資源再生やバイオマス・エネルギーといったESG投資の観点からも注目されています。

 

森林投資では、運用会社であるTIMO(Timberland Investment Management Organization)が、木の種別や地域分散を考えて森林を購入し、育林後、木を伐採して売却します。その売却代金がインカムとなります。

 

対象となる木は広葉樹(ハードウッド)と針葉樹(ソフトウッド)に大別され、育林期間は通常6年〜80年ですが、場所や気候、そして育林技術によって前後します。購入された森林は施肥や間伐を行い、商品化できるようになると伐採します。

 

そして、伐採後は再度植林をします。森林の管理には別途に森林管理マネージャーを採用することもあります。

 

ファンド終了時には森林を売却して換金します。育成に時間がかかるため、基本的には高リスク・高リターンとなります。

 

投資対象は主に米国で、他に英国、オーストラリア、ニュージーランドですが、新興国にも広がってきています。

 

投資の形態としては償還まで10年以上のクローズド・エンド型私募ファンドが多いのですが、上場REITやオープン・エンド型ファンドもあります。

 

リスクとしては火事や災害、害虫や病気による生物学的なリスクと、木材価格や規制、環境などの経済的リスクがあります。

 

主な農地投資戦略は、すでに耕作を行っている農家から農地を購入し、その農家へリースバックするものです。

 

農地のリース料がインカム原資ですが、さらに契約によっては、収穫した農作物の売却収入の一部を得る収穫按分もあります。

 

農作物としては、土壌から収穫する種まき型作物(ロウ・クロップ:トウモロコシ、大豆、綿、芋、レタス等)と、木から収穫する樹園作物(パーマネント・クロップ:オレンジ、グレープフルーツ、りんご、ぶどう、木の実等)があります。

 

中でも、トウモロコシ、さとうきび、大豆、菜種、ひまわりはバイオマス・エネルギーにも利用できます。樹園作物は木を育成するのに時間がかかるため、相対的に高リスクです。

 

運用者は、場所や作目の種別を分散させて運営します。農地管理には別途農地マネージャーを採用することもあります。

 

農地マネージャーは施肥、種まき、灌水、収穫などのサポートを行い、品質や単収の向上、肥料の一括購入などのコスト削減を行います。また、市場動向調査を行い、どこにどの商品を提供すべきかのアドバイスやマーケティングも行います。

 

森林投資に比べると市場規模は小さいですが、米国を中心にカナダ、オーストラリア、英国などが投資対象となっています。

 

リスクは森林と同様に、生物的なものと経済的なものに加えて、リース契約を行うために、農家の信用リスクもあります。リース料は比較的安定的な収入であり、森林投資に比べるとリスクが低い投資戦略となっています。

 

 

川原 淳次

野村アセットマネジメント株式会社

マルチアセット&ソリューションズ担当CIO

 

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川原 淳次

東洋経済新報社

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