流動性リスクを逆手にとる「エンダウメント投資」のメリット (※写真はイメージです/PIXTA)

エンダウメント投資とは、米国の名門大学などが実践している「寄付金で財団や基金を設立し、寄付で集められた資産を元本にして運用する投資」のことで、継続して高い利回りをあげています。今回は、エンダウメント投資の手法である長期・分散投資のメリットを見ていきます。※本連載は、川原淳次氏の著書『大学・財団のための ミッション・ドリブン・インベストメント』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

長期投資家にとって「時間」は最大の味方

エンダウメント・モデルでは、資金特性を生かして長期投資を行っています。短期的にはリスクが高くて投資ができないと判断されても、長期間の投資を許容できれば、より高いリターンを期待できる可能性があります。

 

ここで、国内債券をコア資産とし、一部を世界株式に投資するポートフォリオを考えます。「国内債券7割:世界株式3割」のポートフォリオの、1ヵ月保有、3ヵ月保有、6ヵ月保有、1年保有、3年保有、5年保有、10年保有を繰り返します。

 

その時のリターンを計測すると、保有期間によらず平均値は変わりませんが、最大と最小の差は、投資期間が長いほど小さくなります。短期保有ではリスクは高いのですが、長期投資によるリスク抑制効果が期待できます(図表1)。

 

[図表1]

 

時間とは、運用においては多大なる効果を生み出します。大学、財団、年金といった長期投資家は、個人投資家や銀行などの比較的投資期間が短い投資家に対して、優位な立場にいます。

 

投資期間が短い投資家は、プライベート・エクイティのような流動性が低く、高いリスクの投資を避ける傾向にあります。そのため、流動性のない資産は混み合うことによるリターンの劣化が起こりにくくなっており、エンダウメント・モデルではそれらを投資対象にすることによって高いリターンが期待できます。

支出を減少させることが累積投資の効果を高める

基金にとって支出政策とは、現在と未来のバランスを取るものです。投資成果を全額支出する場合と、一部を将来のために蓄積する場合の違いは、累積投資の効果に関わってきます。累積投資は長期投資の効果と相まって、資産成長を支援します。

 

例えば、期初100万円の資産を年率3%で運用し、期末に3%全額を支出すると、資産は期初と同じ100万円で、資産自体は成長しません。

 

一方、3%で運用し、支出をまったくしないと、100万円は1年後に103万円になり、2年後に106.09万円になります。

 

1年後の投資成果である3万円を再投資したために、その3%である900円が果実となります。それを繰り返すと、10年後の資産は134万円、20年後は180万円、30年後は242万円になります。

 

次に、運用成果の一部を支出しながら資産成長させることを考えます。

 

3%のうち2%を支出し、1%を累積投資に回せば、その支出の確保とともに、1%分の資金の累積効果が得られます。当初100万円の資産から運用をはじめた場合3%全額を支出すると支出額は毎年3万円で一定です。

 

一方、2%を支出し、1%を累計投資にまわすと、資産成長によって最初の2万円の支出額が徐々に大きくなっていきます(図表2)。

 

[図表2]

 

寄付基金を成長させることは、将来の支出額を向上させることになります。現在の支出と将来の支出のバランスを取るためには、適正な支出政策が鍵となります。

 

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野村アセットマネジメント株式会社 マルチアセット&ソリューションズ担当CIO

1988年東京農工大学大学院工学研究科修士課程修了。同年野村総合研究所入社。米国NRITI出向を経て、1997年野村證券金融経済研究所の主任研究員兼年金・大学向け運用コンサルタント。
2005~09年野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー・アメリカ社長兼CEO/CIOとしてヘッジファンド、リアルアセット、プライベート・エクイティのオルタナティブ投資ゲートキーパー。
2011年、ブラックロック・ジャパンを経て、2015年9月より野村アセットマネジメントソリューション担当Co-CIO、2018年4月より現職。

著者紹介

連載国内大手運用会社のCIOが教える、大学・財団における資産運用の「考え方の軸」

大学・財団のための ミッション・ドリブン・インベストメント

大学・財団のための ミッション・ドリブン・インベストメント

川原 淳次

東洋経済新報社

大学には学生の教育や社会経済貢献のための研究、財団には慈善事業のためになどの組織によって様々なミッションがある。そのミッションは長期的、恒久的に実現するものであり、そのためには財政的に支援する資産運用の長期的視…

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