飯田屋にはノルマばかりか「売上目標」も「飛び込み営業」もありません。数字に追いかけ回される経営をすべてやめ、「3ない営業」を実行しているといいます。それでも売上が上がるのはなぜでしょうか。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

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ノルマがないのに従業員がサボらないワケ

「ノルマや売上目標といった数字の管理を今後一切廃止する」と従業員に伝えました。ノルマによる売上達成ではなく、笑顔による売上向上を目指そうと決意しました。

 

■業界常識はずれの「3ない営業」

 

そういうわけで、飯田屋にノルマはありません。

 

「ノルマがなければ、人はサボる」と、親切に僕に教えてくれた方がいました。

 

いいえ、飯田屋の従業員は誰一人サボりません。

 

売上の数字で縛らなくても、目の前のお客様を大切にすれば繁盛は訪れます。この「目の前のお客様を大切にする」という〝当たり前〞は、文字どおりの意味ばかりでなく、一緒に働く従業員を誰よりも信頼するという僕の決意でもあるのです。

 

ですから、飯田屋にはノルマばかりか「売上目標」もなければ、「飛び込み営業」も行いません。数字に追いかけ回される経営をすべてやめ、「3ない営業」に徹しています。

 

「個人のノルマをなくすのはわかったけれど、会社としての経営目標はあるでしょう?」

 

という質問をよくされます。それも答えは「ありません」です。

 

経営目標があったら、従業員を数字で判断してしまうかもしれないからです。それでは意味がありません。決めたからには、どこまでも徹底的に行うことが肝心です。

 

もちろん、以前は多くの企業と同じように売上目標があり、飛び込み営業もしていました。この業界では、飛び込み営業による外売りが売上の大半を占める会社が少なくありません。飯田屋でも店にお客様が来なかったころ、飛び込み営業専門の営業会社にしたらどうかと考えたときもありました。

 

外売りで選ばれるためには、圧倒的な安さが必要です。

 

「もっと、いいものないの?」

 

の問いは「もっと、安いものないの?」を意味していました。商品の品質よりも、安さを求められるお客様が多いのです。

 

飯田屋では数字の管理をなくし、「売るな」の営業方針を決めたときから、安さだけで勝負をする商売から卒業しました。今では外売りは0%です。

 

その代わり、お客様にわざわざ飯田屋まで買いに行きたいと思ってもらえるような品揃えと、お客様に寄り添った接客に努めています。安さ で選んでもらうのではなく、飯田屋でなければ味わえない体、験、 でお客様を惹きつけるためです。

 

一般的に、企業経営には数値計画に基づいた事業計画が不可欠とされます。飯田屋ではそれらを一切なくしたのですから「無謀な経営」と言われても仕方ありません。「計画性がない」「改善点が明確化されない」「利益の分配が計れない」などと揶や揄ゆ もされます。

 

しかし、「3ない営業」によって売上とお客様の満足度が上がっているのは、まぎれもない事実です。今の僕たちには最適な営業方針なのです。

 

黒字利益を生み続けているので、銀行から意見されることもありません。

 

特に節税対策もしないため、税金は多めに払っている可能性がありますが、大きな問題ではありません。これからも税金はバンバンと払っていこうと思っています。

 

利益の使い道は、多角経営や多店舗展開ではなく、従業員への還元と新しい料理道具の開発や仕入れに回していきます。何よりも嬉しいのは、従業員たちが「営業方針がわかりやすくて働きやすい」「仕事にやりがいを感じられる」と言って、目をキラキラとさせて見せてくれる〝笑顔〞です。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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