飯田屋にはノルマばかりか「売上目標」も「飛び込み営業」もありません。数字に追いかけ回される経営をすべてやめ、「3ない営業」を実行しているといいます。それでも売上が上がるのはなぜでしょうか。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

1円の利益にもならない「非生産的で非効率」ルール

■1人のお客様に160時間

 

「売るな」という営業方針を決め、「3ない営業」で売上目標をなくしました。代わりにすべきは、目の前のお客様に喜んでもらえる方法を考え、思う存分に実行することです。

 

そこで、新しく「160時間ルール」を設けました。

 

これは「ほかのすべての業務を放棄してでも、一人のお客様の満足のために160時間までは充ててもいい」というルールです。僕たちはノルマを持たない代わりに、目の前にいる大切なお客様をとことん大切にすると決めているからです。

 

160時間の根拠は、一日8時間勤務で1カ月の平均勤務日数が20日。つまり「8×20」で160時間という単純なものです。

 

1カ月間まるまる一人のお客様に充てることができるのです。靄のかかったサングラスを捨て、お客様の気持ちに寄り添った接客を目指すためのルールだと思ってください。「非生産的で非効率」というのも、もっともなご指摘です。

 

一日の営業時間はたった8時間。その中でやらなければならない業務は山ほどあります。それでもこのルールを実行できるのは、飯田屋に助けあいの文化が根づいてきたからにほかなりません。誰かが160時間ルールを適用しはじめたとわかれば、必要に応じてほかの従業員が自然とフォローに回ります。

 

それで売上が減ったとしてもかまいません。「目の前のお客様を大切にする」という飯田屋の姿勢が伝わればいいのです。

 

お客様が心に秘めているご要望を引き出すためには時間がかかります。160時間をかけても、お客様のご要望にお応えできないことはあるでしょう。しかし、本気で対応した気持ちだけは必ず伝わるはずです。

 

「1円の利益にもならない」と、他社から揶揄されることもあります。

 

しかし、なんの問題もありません。

 

かつて僕は、飯田屋を日本でいちばん売るのがうまい店にしたいと思っていました。でも今は、飯田屋を日本でいちばん相談に行きたくなる店にすることを目指しています。

 

そのためには、売るのが巧みな店員は必要ありません。お客様が相談に行きたくなるような優しさに秀でた店員が必要なのです。

 

この160時間ルールができてから、飛躍的に来店客数が伸び、実際にご購入客数が増えました。それは必然なのです。

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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