(※画像はイメージです/PIXTA)

周りの視線に脅かされずひとりの時間を過ごせるかどうかは、それまでの「受け入れられ体験」の多さ、少なさも大きく影響しているといいます。この人は自分のことを受け入れてくれている、そう思える相手がいるのは、人を精神的に強くしてくれるといいます。※本連載は精神科医である和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

理解者がいると人を精神的に強くする

■「受け入れられ体験」がいつのまにか心を強くしてくれる

 

周りの視線に脅かされずひとりの時間を過ごせるかどうか、「他人は他人、自分は自分」と思える強さを身につけているかどうかは、それまでの「受け入れられ体験」の多さ・少なさも大きく影響しています。

 

「この人は自分のことを受け入れてくれている」
「こんなことくらいで、この人は自分のことを嫌いにならない」

 

そう思える相手がいるのは、人を精神的にとても強くしてくれるのです。

 

親友以外に、親や兄弟、恋人や配偶者などがそういう相手になってくれる場合もあるでしょう。彼らは非常に心強い存在です。

 

■エジソンとその母のすごさ

 

トーマス・エジソンも、母親からの「受け入れられ体験」に救われたひとりです。

 

エジソンといえば、白熱電球や蓄音機など、1000を超える発明をした「発明王」として知られていますが、彼はADHD(注意欠陥多動性障害)とLD(学習障害)、さらにディスクレシア(読字障害)であったと言われています。

 

子ども時代からけっこうなヤンチャぶりで、「火はどうやって燃えるんだろう?」と思えば、自宅の納屋で藁に火をつけて全焼させ、小麦の倉庫のなかが気になれば、高い場所にある窓によじ登って転落する。とにかく手のかかる子どもでした。

 

小学校でも、算数の授業で「1+1=2」と習えば「1個の粘土と1個の粘土を合わせたら大きな1個の粘土になるのに、なぜ2個なの?」とか、英語の授業でアルファベットを習えば「AはどうしてPとは呼ばないの?」などと、先生を質問攻めにして困らせたという逸話が残っています。

 

教師からすれば、落ち着きがなく、じっと座っているのが困難で、教えたことをすんなり受け入れられないエジソンが厄介でしかたがなかったのでしょう。

 

エジソンは「君の頭は腐っている」とひどい言葉を浴びせられ、他の子どもたちの迷惑になるということで、わずか3ヵ月で小学校を退学するという不名誉なことになってしまいました。

 

まだADHDやLDという概念がない時代だったため、しかたがないといえば、しかたがないのかもしれませんが、「君の頭は腐っている」というのは、子どもを傷つけるのに十分な言葉です。エジソンも心を痛めたに違いありません。

 

そんなエジソンの絶対的な味方になってくれたのが、彼の母親だったのです。

 

エジソンの母は、学校に見放されたエジソンを自分の手元で教育することを決意。落ち着きのないエジソンが勉強中に立ち歩きをしても、机に戻ってくれば「戻ってこられて偉いわね」と褒め、話をちゃんと聞いたときには「あなたは賢くなるわ」と褒めたそうです。

 

エジソンはたくさんの発明もしましたが、失敗が多かったことでも有名です。

 

「私は失敗したことがない。ただ1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」

 

という名言は有名ですが、失敗してもあきらめない不屈の精神や粘り強さは、母からの「受け入れられ体験」によって磨かれたものでしょう。

 

エジソン自身、「何があっても支えてくれた母がいたから、いまの私がある」「どんなに苦しいときでも、母を喜ばせたくて私は努力を続けることができた」と述懐しています。

 

それがあったからこそ、彼は世界的に有名な発明王となれたのでしょう。

 

私たちは自分のことを受け入れてくれる他者の存在があってはじめて、自分の本領を発揮できるようになるのです。それを忘れてはいけません。

 

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