(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後2000万円問題」が話題となったことからもうかがえるように、今、多くの日本人が老後生活に不安を抱えています。しかしその「漠然とした不安」は、制度を正しく理解していればなくなるものです。ここでは、「公的年金」と並び多くの人の老後の資金となる「退職金」について、企業年金コンサルタントの細川知宏氏が解説していきます。

 

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意外と知らない…「退職金」には様々な種類がある

一般的に、公的年金以外で会社員の老後資金の備えと考えられているものに、退職金があります。「生活保障に関する調査」(※)でも、3位に「退職金や企業年金だけでは不十分」として、企業年金と並んで退職金に対する不安が挙げられていました。

 

※ 公益財団法人生命保険文化センターが実施(令和元年度)

 

ここで確認しておきたいのは、「退職金」と「企業年金」の違いについて正しく理解しているかという点です。ひいては、自社で導入されている退職金、企業年金の制度について正しく理解しているかということにもつながります。

 

実は「退職金」と「企業年金」を並列に考えること自体が、不正確です。「広義の退職金」は、「退職を契機にして給付するお金」のことであり、「退職給付金」といいます。何を契機として支払われるお金かという観点から見た分類の一つが「退職給付金」だということです。

 

一方、「年金」というのは、毎年一定額ずつ分割してお金を受け取る「受け取り方」を示す言葉です。退職後に給付される年金は「退職年金」です。

 

では、年金ではない受け取り方は何かといえば、一時にまとめて受け取る「一時金」です。退職後に給付される一時金は「退職一時金」です。この退職一時金が、世間でいわれる「退職金」(狭義の退職金)のイメージでしょう。

 

例えば、「退職金や企業年金だけでは不十分」というときの退職金は、退職一時金(狭義の退職金)を指しているということです。

 

さらに、本来一時金または年金として支払うべき退職給付金を、退職前に支払う方法もあります。これは「前払い退職金」と呼ばれています。これも、退職給付金の一部です。

 

一方で、企業年金は「年金」という名前がついています。例えば「企業型確定拠出年金」です。これは「年金」という制度名ですが、年金受け取りではなく、退職一時期金として受け取ることもできます。

 

つまり、「企業型確定拠出年金」は、退職給付金の一種であり、一時金(狭義の退職金)として受け取ることもできれば、年金として受け取ることもできる制度なのです。

 

「退職金」という名前がついている中小企業退職金共済(中退共)も、退職一時金として受け取ることができる一方、一定期間の分割(年金)として受け取ることもできます。

 

なお、退職一時金と退職年金の両方を併用しても、もちろん問題ありません。

次ページ「退職年金」を用意している企業の割合は、なんと…

※本連載は、細川知宏氏の著書『社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法

社員を幸せにしながら社長の資産を増やす方法

細川 知宏

幻冬舎メディアコンサルティング

社員の退職金・年金を「見える化」し、社長の老後資金も増やせる⁉ 中小企業だからこそ活用できる「企業型確定拠出年金」を徹底解説。 本書では、大手証券会社勤務を経てIFA(金融商品仲介業者)となり、数々の「企業型確定…

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