(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックが勝ち残っていくためには、優秀な人材が必要です。しかし歯科医師の採用は容易ではなく、さらには引き抜きや引き留め工作などの駆け引きも珍しくありません。歯科医院経営を成功させる体制づくりについて、採用から人材育成の流れを見ていきましょう。

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成功するドクターの絶対条件は「性格の良さ」

医師の側の経営力にもいろいろな面があります。マネジメント力、リーダーシップ、経営理論、コミュニケーション力、会計スキル、人材掌握術などなど。確かに、そうしたものを身に付ける必要があると思いますが、それでも、成功するドクターの「絶対の条件」は、性格の良さであり、人間性でしょう。

 

それはなんといっても患者さんという人を相手にする商売だからです。歯科医院もサービス業であるし、接客業であることに間違いがないのですが、患者さん(お客さん)が体を預けてくる点が他と違うところです。

 

人間性が良い、性格が良い人が経営すると、そのことが患者さんに伝わります。性格が良いドクターは、目の前の困っている人を一所懸命救ってあげたいと思います。儲け主義でも流れ作業でもなく、一度ずつの診療に真剣に臨みます。その姿勢は患者さんに伝わります。

 

さらに、そういう気持ちをもったドクターは勉強に余念がないですし、腕も自分で磨きます。そうやって、技術は独立してから自然と伸びていくものなのです。

 

ただ難しいのは、歯科の場合、歯周病ケア、矯正、歯並び、インプラント、美容歯科などと専門分野がありますが、それぞれの専門的な技術は見せ方が難しく、自己満足になることが多いということです。治療の結果で腕の差は徐々に証明されていくものですが、一概に患者さんがその腕を見抜くということは簡単ではありません。見るからに差別化するということがしにくいものなのです。

 

つまり、普通の人が歯医者に行ってもそのドクターの技術力は分かりません。では何を見るかというと、ホームページを見るくらいしか情報はありません。専門分野が羅列されています。それだけで判断は難しいでしょう。治療過程の写真とか、インプラントの結果、矯正したあとの歯を並べて見て、ドクターを選ぶというわけにはいきません。結局、治療に行って、そのドクターと話をしてみて、「この先生、結構いい感じだな」「私のこと理解してくれているな」などと感じられるかどうかが重要です。

 

それ以上に一般的な誘引は知り合いなどの紹介です。人が人を呼ぶ紹介は大変重要です。私たちも初診にいらした患者さんのルートを統計処理していますが、やはり紹介が多い。紹介が増えないと、いくら患者さんの数が増えていても本物ではないと思っています。

 

その場合の内容も、「怖くない」「痛くない」「説明が的確で分かりやすい」「人当たりがいい」などです。確かに痛くないのは技術が良いともいえますし、説明が的確というのは知識の深さを反映しているともいえますが、技術の高さについては、やはりあまりよく分からないのだと思います。

 

だから、もちろん技術を磨くことは大切なのですが、まず打ち出すのは別のところがいいと思うわけです。紹介を増やすためにも、分かりやすい感じの良さや居心地の良さが結局大切なのです。

最終的には「性格さえ良ければ」合格…人材の採用基準

筆者の医療法人・佑健会でも、新しくスタッフを採用する場合は試用期間を設けています。本当の相性は、働いてみないと分かりません。だから試用期間です。やはりそこでいちばん観察するのは人間性であり、性格です。最終的に、性格さえ良ければ合格です。

 

今は、歯科医院にも多様性が求められる時代ですが、それでもやはり、総合力のあるスタッフを欲しています。幅広く対応できる人です。歯科衛生士や歯科助手としてのスキル、適応性。コミュニケーション能力。そして最終的には人間性です。

 

ただ、一言で人間性といっても、定義が難しいのも事実です。しかも、人間力と言い換えてみると、これは成長にともない変わっていくものでもあるので、入ってもらったあとの教育や努力も必要になります。ただ、それを受け入れて伸びていこうと思う気持ちがないと成長はしません。その気持ちこそが人間性の良さといえるのではないかと思っています。素直さであり、柔軟性であり、自己肯定感と成長意欲です。

人間性さえ良ければ、治療技術や年齢は「不問」のワケ

これはドクターも同じですが、ほとんどのドクターの場合、面接でいろいろと質問しても、「この処置の経験がある」とか、「得意とする分野はどこ」、などと技術部分の話ばかりをしたがります。一般的にはそこが大事なのでしょうが、私はそうしたことを、こちらからは一度も尋ねたことがありません。

 

スキルも年齢も重要ではないからです。例えば、佑健会でいちばん年齢が上のドクターは70代です。その次が60代後半。そうした年齢なども関係がありません。人を見て決めています。

 

スキルがなくても、人間性があればいいのです。どんなにスキルがあっても、完璧なスキルというのはありません。中途半端なスキルがあっても、人間性がともなわないほうが扱いにくいのです。

 

もちろん、技術的なスキルは患者さんにとっては重要ですから、そこは伸びてもらわないといけないのですが、人間性が良ければ、絶対に伸びます。自信をもって伸ばせると言えます。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

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河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

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