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「3ヵ月後に来てください」だけでは来院しなくなる
歯科医で診てもらった時、特にはっきりとしたインフォームドコンセントもなく、「次回は3ヵ月後」と言われたことがありませんか。これは、実はあまり深い意味がなく次回を設定している場合が多いのです。
3ヵ月後というのはリコールということですが、その意味をしっかりと説明しないと、その患者さんとの関係性はそこで切れてしまいます。それは自院の経営にとっても良くないことですし、患者さんのことも真摯に思っていない行為です。
もしリコールでない「様子見」ならば、3ヵ月も空けたら、どうなるか分からないのですから、「1ヵ月くらいで来てください」と言うほうがプロなのです。
「経過を見たい」の一言も大事です。それは噓ではない。来週でもいいですが、今週のほうがよりいいと私は思います。
「様子見しましょう」「慣れてくるので…」は禁句
差し歯や入れ歯に「慣れる」はあり得ない…違和感がなくなるよう調節すべき
細かなことですが、例えば差し歯をしたりとか、入れ歯を入れたりしたときに「使っていれば慣れてくるので」という言い方をよくします。もう一つは「1週間後に様子を見ましょう」とよく言います。
この二つの言い方も私は極力しないようにしています。
なぜならば、まず「慣れる」というのはあり得ないことだからです。入れた歯が噛んで硬いとか、違和感があるとなれば、何かあるわけです。それは決して慣れるものではない。もう一度しっかりと調整してあげないとよくなりません。だから「慣れる」という言い方はできるだけ使うべきではないのです。
「様子を見ましょう」ではなく「経過を見させてください」が正解
もう一つが「様子を見ましょう」。「様子を見てどうなるのか?」という話です。そうではなくて、こちらからすれば、どうなるかというパターンは分かっているので、そのどれなのかということを経過観察で知りたいわけです。どの処置についてもそうです。だから、相手任せの「様子を見ましょう」はおかしいのです。
つまりは「様子を見ましょう」ではなく、「経過を見させてください」なのです。歯を抜いた次の日に痛みが治まるなんてことは絶対にないので、例えば「明日は痛いので、痛み止めを飲んでください。ただ万が一痛みが3日続いたら、何かおかしいので、その場合は必ず連絡くださいね。その後、こういうふうに傷が治っていくので、1週間くらいあとに一度、経過を見せてください」としっかりと説明する。あるいは「明日、消毒しますね」というふうに来てもらいたい明確な理由がある場合は、しっかり説明して予約につなげるのがあるべきドクターの姿です。そこをスタッフ全員でフォローしていけばいいのです。
「様子を見ましょう」の結果、来院しなくなるケースが多い
最初に勤めた医院のドクターに、「様子を見ましょう」は良くないと徹底的に教育されました。私もその前1年間、大学病院に勤めていて、その言葉が実は染みついていたのです。そこで「確かにそうだな」と納得しました。
しかも、「様子を見ましょう」と言われただけで予約も取らないでいたのでは、痛くならなければもうその歯科医院には行かないと思います。それでフェードアウトになってしまう場合がすごく多いのです。
経過を見て、大丈夫なら「終わりです」と明言
フェードアウトではなく、「終わり」ならば「終わり」とはっきりと告げて、終わらせる。そのためにも必ず、例えば「1ヵ月後に経過を見せてください」と言う。それで経過を見て大丈夫ならば、本当にそこで終わりでもいいのです。
患者さんもそのほうが絶対に安心なのです。もしまた痛み出したら、歯医者に行こうと思うはずですが、「様子を見ましょう」と言われてすでに半年も1年も経っていてフェードアウトした医院にはもう行かないという人が多いと思います。別の歯医者を探すという行動を取るのではないでしょうか。
逆に、しっかりと「終わり」と言ってくれた歯医者なら、「どうしたのだろう。また診てもらわなくちゃ」と思うはずです。治療のときのやり取りを含めた体験が良く、信頼に足ると思えばそうなります。あるいは、まだケアしてもらっている状態であればそれこそ、気軽に行けるはずです。だから私は1ヵ月後でも3ヵ月後でも、必ず予約を取ってもらうようにしています。
「次回予約してから帰ってもらうこと」が鉄則
「忙しいから分からない」と言う人も少なくないと思いますが、「別にキャンセルしてもいいので、とりあえず取っておきませんか?」と促します。とりあえず予約を取ると、ほとんどの人がキャンセルなしに来院されます。「分からない」と言いながら予約をした人も必ずと言っていいほどやってきます。逆に、予約せずに帰った人はまずリコールには現れません。そんなものなのです。
患者さんというのは忙しい人も多く、もっと間を空けたいと思う人も多いのです。治療方針について納得しないこともあります。しかし、そこはやはりプロとして多少ぶつかってでも、しっかりと正しい判断を伝える必要があります。話し合うことによって、患者さんの知識も増えていきますし、納得もしてもらえます。すべてコミュニケーションです。
ベースはやはり、患者さんと真摯に向き合うということです。これも、専門医としての務めでもありますし、結局はおもてなしの気持ちの表れなのです。
患者さんを教育することで、患者さんにはもっと本気で治療に取り組んでもらいたいので、ほかのドクターにも「患者教育はしっかりやらなくてはいけない」とよく言っています。私たちはプロとして、こういう手順があって、このとおりにしないとこうならないという法則を知っているので、それを一所懸命に患者さんに伝えて、患者さんもそこから知識を得て納得してもらう。だからこの治療は金額が高いのも仕方ないのだと納得してもらいたいのです。
医療において患者さん主体にするためには、時には患者さんの意見を否定して、言うことを聞いてもらわないといけないというバランスも必要だということです。
河野 恭佑
医療法人社団佑健会 理事長
株式会社デンタス 代表取締役社長
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