(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックが勝ち残っていくためには、優秀な人材が必要です。高い技術や豊富な経験を持つ「即戦力」が魅力的な人材に見えるのは、どの業界でも同じでしょう。ところが歯科医院を経営する筆者は、「スキルがなくても人間性があればいい」と語り、採用面接でも年齢や実績を自ら尋ねることはありません。実際に「治療が苦手なドクター」を雇ったことも…。「できない人」を「できる人」にするには、どうすればよいのでしょうか?

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できない人が「できる人」に甘える環境を作らない

大きな課題の一つは、スタッフが横一列で数人いたとしたら、どうしても能力の低い、高いで仕事量が偏ってしまうことです。できる人間で人間性がいいと、できない人の分も背負うことになります。フォローする傾向があるので、自ずと、その人の仕事量が多くなります。そういう偏りが私は嫌いなので、最初からまだできない人間をできる人間とペアにして働いてもらっています。

 

これは、そもそもはオン・ザ・ジョブ・トレーニングなので、それで早く成長してほしいのですが、そううまくいかない場合もないとは言いません。

 

ただ、こうすることで、立場がはっきりとします。分からないようにカバーしてもらうよりも、関係性が分かるので、甘えられないようになります。

 

逆に、能力があってできる側の人は、早め早めに役職を付けて、給料に反映させます。そうでないと、言葉を選ばなければ、尻ぬぐいばかりで給与も同じでは、不公平になってしまいます。

「一生懸命に努力する人」は必ず「できる人」になる

もっとも、いちばん大事にしているのは勤続年数です。基本としては、勤続年数が長い人はそれだけで評価しています。勤続5年ごとに賞状と金一封をあげます。社員総会で表彰します。素直に、「長くいてくれてありがとう」という気持ちです。「長くいることは容易なことではない」と思っています。

 

不器用でも一所懸命に努力する人は必ず伸びます。時間は掛かりますが…。できないのに努力しない人の場合は、だんだん起こす問題が大きくなります。

 

そういう場合は、今、勤務している医院を変えるなど、環境を変えることもあります。一度採用した人をこちらから辞めさせたくはないので、なんとかしてやる気を出してほしいと思っています。

 

ここで大切なのは、裏の話よりも、患者さんに相対している表で問題を起こさない、あるいは次は起こさせないという点です。

 

これも歯科医院に限ったことではないと思いますが、お客さん、医院の場合は患者さんに育ててもらう、ともに育つという面が大きいと思っています。

 

正直、常連のお客さんには甘える場合もあります。それでも、なんとか許してもらいながら、できるスタッフを育てたいのです。

 

医療ですから、間違っては大変なこともたくさんあります。それも含めて、あるいは筆者がいちばん力説している患者さんの居心地の良さなどももちろん含めて、スタッフの善し悪し、成長度合いは、それこそ患者さんを通して分かることでもあります。

 

患者さんを待たせてでも、その場で注意するというスタンスも、患者さんに甘えて行う教育であるわけです。すべて、より良い明日のために、なのです。

できる人、できない人の差は「空気が読めるか否か」

私はよくミーティングで辛辣なことを聞きます。

 

「仕事のできない奴って、どんな奴だと思う? 逆に仕事ができる奴は?」

 

答えは空気が読めるか読めないか、です。その場の空気を読んで瞬時に対応できる人間は「できる奴」です。それこそ、いくら技術があっても、空気が読めないドクター、スタッフは大変です。だから、例えばどこかに商談に行くといった場合も、別にいかなる資格をもっていなくても、空気が読めるスタッフを連れていったほうがよほど次のビジネスにつながります。一緒に動くのも楽です。

 

確かにドクターと衛生士ではやれることが違いますが、そこが衛生士などのスタッフが、とても大切であるということの理由でもあります。単なるアシスタントではないのです。

 

もちろん、それだけのスタッフを育てるためには、教えるだけでなく、任せる勇気が必要です。万が一の場合は責任を取る覚悟をもって、育てる気概も必要になります。衛生士には衛生士の役割が決まっていて、そこを外れてはいけないと思っているドクターも多いようですが、それではこの業界が発展していくことはないと思います。

「任せる勇気」がもたらした分院展開のきっかけ

最初は1医院を大きくしていこう、日本一の歯科医院にしようと思っていました。頑張ったおかげでその医院は繁盛しました。繁盛する一方で、患者さん一人ひとりへのおもてなしが損なわれてしまうことを危惧するほどに…。

 

そんな時に、一人、ずっと一緒にやりたいと思っていたドクターに声を掛けました。中高の同期です。中学、高校は全寮制で医者、歯医者になる人は学年の半分くらいはいたのですが、高校生のときから「将来、一緒に仕事をしたい」と強く想っていた友人でした。今の副理事長です。

 

そのタイミングだったので、私から声を掛けて分院をつくることにしたのが分院展開の始まりでした。何十件も一緒に現場を見に行くなかで「ここ」という場所に出会い、開院しました。おかげさまで今では多くの患者さんに来ていただける医院になりました。

 

いずれにしても、日本一になるという夢はずっと語ってきました。ただその姿形は、経験を積み、いろいろな人に出会い、視野が広がるにつれて変わっていったということです。でも、どこまで登っても、基本は変わらないのです。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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    ※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    河野 恭佑

    幻冬舎メディアコンサルティング

    コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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