ある女性は、中年になってから出会った親友と同居生活を送っていました。しかし、親友の持病が悪化。病床の親友は、疎遠だったひとり娘を呼ぶと「全預貯金を親友に」と心情を語り、同じ内容のメモを見せました。納得したかに見えた娘ですが、親友の死後、態度を急変させます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「もちろん振り込みます。口座番号を教えてください」
秋本さんは60代半ばまで働いて生活費を出し、その間は馬場さんがすべて家のことをやるという役割分担で、双方不満なく暮らしていました。また、退職後はふたりの年金を合わせて生活費や治療費等をやりくりしていたため、馬場さんの預貯金1200万円は、ほぼ手つかずで残っていたのです。
馬場さんも、2人の前で娘が快諾したことで、このメモが遺言書代わりになると考え、安心していました。
その後、馬場さんは亡くなりました。秋本さんは馬場さんの娘とふたりで、自宅に残った馬場さんの遺品整理を行いました。秋本さんは勇気を出して「馬場さんの預金のことなのだけど…」と切り出すと、娘は笑顔で「もちろんです、解約して振り込みます。おばさまの口座番号を教えてください」と紙とペンを差し出しました。
秋本さんは口座番号を書いて渡すと、娘はそのまま家頭を下げ、秋本さんの自宅をあとにしました。
しかしその後、娘からは「口座が凍結されてしまった」という連絡があったきり、お金が振り込まれることはありませんでした。不審に思った秋本さんが調べると、相続人が1人の場合に口座が凍結されることはないとわかり、生前に馬場さんが残したメモを手に、なにか解決方法がないかと、筆者の事務所を訪れたのでした。
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株式会社夢相続代表取締役
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相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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