(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢母は、月20万円の家賃が入る店舗併用住宅で独身の息子と同居。近居の娘家族は、やはり母所有の築古戸建に暮らしながら、母の老後を心配しています。ある日、母が突然娘に「あなたが暮らす家を、あなたに贈与する」といって手続きを促します。しかし、店舗併用住宅のほうは、とっくに息子のものになっており…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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高齢母は独身兄と同居、妹家族は母所有の別宅に近居

今回の相談者は、40代の専業主婦の松本さんです。松本さんの70代の母親は、長年松本さんの兄(50代独身)と同居してきました。

 

母親と兄の自宅は店舗併用住宅で、1階を飲食店に賃貸しており、毎月20万円の家賃は母親の生活費となっています。母親は自宅から15分程度の場所に、もう1軒、かなり築古の家を所有しており、こちらも以前は賃貸に出していました。入居者が退去したあと、しばらく空き家になっていましたが、数年前から松本さん家族が住むようになりました。 

 

 

母親は松本さんの2人の子どもを大変かわいがっており、いつでも孫の顔が見られるようにと呼び寄せたのです。

物忘れの増えてきた母、兄に老後は任せられない…

松本さんの兄は会社員で、日中は不在です。松本さんが母親の様子を見に行くと、食事も適当にすませているようで気がかりです。とくに最近は物忘れも増えてきたことから、そろそろ認知症も心配になってきました。

 

しかし同居の兄は、高齢となった母親にまだ自分の身の回りの世話をさせており、とても介護など任せられません。そのため、不安に思った松本さんが、兄と自分たち家族が家を入れ替わってはどうかと提案すると、母親は大変喜んでくれました。

 

しかし、それを兄に伝えたところ大激怒。母親は自分が引き受けるという一点張りです。

「あなたにあの家をあげる。印鑑を押して…」

話し合いが進まないまま数ヵ月経過したある日、松本さんは急に母親の自宅へ招かれました。何事かと思って訪問すると、母親は、松本さんが住む家を松本さんに贈与するというのです。松本さんは驚きましたが、「内緒よ」と繰り返す母親の指示通り印を押し、贈与を受けました。

 

その後、母親が暮らしている自宅について改めて聞いてみると、そちらはとっくに兄へ贈与しているというのです。

 

慌てて登記簿を取ってみたところ、確かに母親が暮らす自宅は兄名義に、松本さんの家も自分名義に変わっています。

 

松本さんは、認知気味の発言が増えてきた母親に不安を抱いた兄が主導したのではと考えています。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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