資源高に逆行するレアル (※写真はイメージです/PIXTA)

ブラジルレアルが今年の夏頃から軟調となっています。きっかけは、ヘッドライン21年8月25日号『ブラジルレアルの足元の変動要因について』でも取り上げたように、ボルソナロ政権閣僚のワクチンの不正調達です。しかし、それはあくまできっかけに過ぎないと思われます。むしろ、そこで見られたボルソナロ政権の支持率の低さと、これを挽回しようとする政策がレアル不安定さの背景と見ています。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ブラジルレアル:資源価格上昇が追い風とならず、軟調に推移

ブラジルレアルが軟調です。主要通貨の対ドル騰落率を2021年10月19日について前日比で見ると、ニュージーランドや、豪ドルといった資源国通貨が1%以上上昇したのに対し、レアルはマイナス1.3%となっています(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年10月19日~2021年10月19日、対円は逆目盛 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルレアル(対ドル、対円)レートの推移 日次、期間:2020年10月19日~2021年10月19日、対円は逆目盛
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ブラジルでは22年10月2日に大統領選挙が予定されています。現職で右派のボルソナロ大統領は再選を目指す構えです。しかし、支持率では有力な対抗馬と見られる左派のルラ元大統領に大きく離されており、ボルソナロ大統領の苦戦が現時点では想定されます。

どこに注目すべきか:レアル安、中国、歳出上限、大統領選挙

ブラジルレアルが今年の夏頃から軟調となっています。きっかけは、ヘッドライン21年8月25日号『ブラジルレアルの足元の変動要因について』でも取り上げたように、ボルソナロ政権閣僚のワクチンの不正調達です。しかし、それはあくまできっかけに過ぎないと思われます。むしろ、そこで見られたボルソナロ政権の支持率の低さと、これを挽回しようとする政策がレアル不安定さの背景と見ています。

 

レアル安の原因には様々な要因が挙げられます。新型コロナウイルスの感染拡大と医療崩壊はブラジル経済に深刻な影響を与えました。ただ、足元の新規感染者数は1日当り1万人を下回る日もあり、1日当たり10万人を上回っていた時期に比べ落ち着きは見られます。

 

中国経済の減速もレアル安要因です。中国の景気減速により中国からの需要減速が懸念されます。ブラジルの中国への主力輸出品である鉄鉱石価格は、原油などと異なり、下落傾向です。

 

このような中、最近のレアル安要因には財政拡大または財政規律喪失への懸念があげられます。具体的には現在ブラジル議会で進行している22年予算が注目されます。

 

ブラジルの財政規律は、歳出に上限(予算での歳出額の増加率)を過去の消費者物価上昇率よりも低い比率とすることが17年から定められています。一方でブラジルのインフレ率は上昇傾向で歳出のやり繰りを難しくしていると見られます。

 

例えばブラジルでは公務員の多さから公務員の給与が歳出負担となっていますが、最低賃金はインフレ率(INPC)を参照して決定されるため歳出の増加が見込まれます。このような事情があるうえに、ボルソナロ大統領は低所得者向け補助金支払いのボルサファミリア(平均支給額は月額190レアル程度)を拡充することを画策しています。

 

報道では支給を300レアルもしくは400レアル(約8200円)に引き上げ、自身の支持率回復を目指しています。このための追加財源の市場の推定は様々ですが恐らく200から300億レアルとの声が多いようです。その場合、ブラジルの歳出上限は守られない可能性もあり市場は議論の動向を見守っています。

 

月次、期間:2011年9月~2021年9月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルインフレ率(拡大消費者物価指数)の推移 月次、期間:2011年9月~2021年9月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ボルソナロ大統領は本来は右派として前回、18年の選挙を戦ってきました。選挙戦では財政改革を訴え、ボルサファミリアには反対の姿勢であったように記憶しています。新型コロナ対策という面は多少割り引くとしても、この方針変更は来年の大統領選挙を意識してのことと見られます。世論調査では、最有力の対抗馬と見られるルラ元大統領が5割近い支持率を集めています。一方、ボルソナロ大統領の支持率は2割程度で大きく水をあけられています。

 

ブラジル中央銀行は利上げによりレアル安抑制とインフレ率低下を目指しています。しかし、中国要因と目下、最大の懸案である政治要因を背景に効果は限定的です。レアルの今後を占う上で、これらの動向に注視が必要です。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『資源高に逆行するレアル』を参照)。

 

(2021年10月20日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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