(※写真はイメージです/PIXTA)

ブラジルレアルは6月末から不安定な動きとなっています。主な変動要因として財政規律、新型コロナウイルス、インフレ動向と金融政策、中国の動向、などがあげられます。特に財政規律は来年のブラジル大統領選挙を早くも意識した面も見られます。各変動要因の影響を整理します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

ブラジルレアル:ワクチン不正調達疑惑から弱含み、変動が続く

ブラジルレアルは2021年8月24日、対ドルで前日から約2.5%上昇しました(図表1参照)。この日上昇した他の通貨を見ると、ニュージーランドドル、カナダドル、南アフリカランドなど資源国通貨も堅調でした。

 

日次、期間:2020年8月25日~2021年8月25日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルの政策金利とレアル(対ドル)の推移 日次、期間:2020年8月25日~2021年8月25日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ブラジルレアルは6月29日にボルソナロ大統領が、ワクチンの不正調達の疑いがある保健省の幹部を解任したことなどを受け売られる展開となっていました。

どこに注目すべきか:レアル、財政規律、IPCA、新規感染者数

ブラジルレアルは6月末から不安定な動きとなっています。主な変動要因として財政規律、新型コロナウイルス、インフレ動向と金融政策、中国の動向、などがあげられます。特に財政規律は来年のブラジル大統領選挙を早くも意識した面も見られます。各変動要因の影響を整理します。

 

まずはブラジルの財政規律についてです。ブラジル政府は16年の憲法改正により歳出上限を設け財政規律を重視する方針を定めました。それまでの政権の放漫な財政運営に対する見直しが背景です。ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大した20年は新型コロナ対策費用の一部を戦時予算としました。歳出上限の枠組みは維持しつつ、実際には財政規律の抜け穴を探し出したようにも見えます。もっとも新型コロナという未曾有の危機を前に、必要な対応であったと考えるべきと思います。問題は、最近になっても財政規律を守る姿勢が議会の一部などに見られることです。

 

なお昨日のレアルの上昇の背景にはブラジル下院議長が財政規律の遵守を明確にしたことも背景と見られます。しかしながら、6月にワクチン不正調達疑惑が発覚したことなどを受けボルソナロ大統領の支持率低下が鮮明となりました。来年の大統領選挙を前に財政規律の維持が危うくなる懸念は燻り続ける可能性が考えられます。

 

ブラジルの新型コロナの新規感染者数は依然水準は高いものの減少傾向です(図表2参照)。

 

日次、期間:2020年8月25日~2021年8月24日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]新型コロナウイルス新規感染者数の推移 日次、期間:2020年8月25日~2021年8月24日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ワクチン接種率(少なくとも1回接種)は足元6割を超えたと見られます。新型コロナのブラジルにおける感染動向の今後を予想することは差し控えますが、足元においてはレアルの極端な悪材料とは言いがたい面も見られそうです。

 

ブラジルのインフレ率は9%に迫る勢いです(図表3参照)。
 

 月次、期間:2016年7月~2021年7月、IPCAは拡大消費者物価指数 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]ブラジルのインフレ率(IPCA、前年同月比)の推移月次、期間:2016年7月~2021年7月、IPCAは拡大消費者物価指数
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ブラジル中央銀行の利上げの背景となっています。ただ、ブラジルの物価上昇の背景に干ばつによる食料品価格と電力価格の上昇(ブラジルの電力は過半が水力発電)など気候要因があります。そのため、インフレ率の高さをある程度割り引くことも可能ですが、それでもブラジル中銀は引き締め姿勢を維持しています。今後は持続性が問われると思われます。

 

最後に、中国の動向は足元でブラジルはじめ多くの資源国通貨に影響を与えています。中国は教育やハイテク分野など幅広いセクターで規制を強化しています。当局の真意は不明で、市場動向は新たな規制の知らせに左右されています。ブラジルレアルは金融政策が下支え要因として期待はされますが、財政規律など国内要因に加え、中国などの国外要因にも左右される展開が想定されます。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルレアルの足元の変動要因について』を参照)。

 

(2021年8月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ7000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧