トルコリラ安の不思議な背景 (※写真はイメージです/PIXTA)

金利に対し独特の考え方をするトルコのエルドアン大統領が利下げに否定的とされる決定会合メンバー3人(含副総裁2人)を今月更迭しており、利下げ自体は予想されていました。しかし9月のコア消費者物価指数(CPI)を下回る水準に政策金利を引き下げたことからインフレ下ながらマイナス実質金利となっています。政策動向がリラの動向を左右する展開が続きそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

トルコ中央銀行:市場予想より大幅な利下げを受け、通貨リラは最安値更新

トルコ中央銀行は2021年10月21日、金融政策決定会合を開催し、主要政策金利の1週間物レポ金利を年18%から2%引き下げ16%とすることを決定しました。

 

市場では1%もしくは0.5%の利下げが予想されていました。今回の決定はこれを上回る利下げで、利下げ決定後にトルコ・リラはドルに対して最安値を更新しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年10月21日~2021年10月21日、対ドルは逆目盛 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]トルコリラ(対ドル、対円)レートの推移 日次、期間:2020年10月21日~2021年10月21日、対ドルは逆目盛
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:リラ安、更迭、大統領選挙、支持率、観光客

金利に対し独特の考え方をするトルコのエルドアン大統領が利下げに否定的とされる決定会合メンバー3人(含副総裁2人)を今月更迭しており、利下げ自体は予想されていました。しかし9月のコア消費者物価指数(CPI)を下回る水準に政策金利を引き下げたことからインフレ下ながらマイナス実質金利となっています(図表2参照)。政策動向がリラの動向を左右する展開が続きそうです。

 

月次、期間:2017年9月~2021年9月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]トルコの消費者物価指数(総合とコア)の推移 月次、期間:2017年9月~2021年9月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

トルコのエルドアン大統領は13日夜、カブジュオール中銀総裁との会談後の深夜に法令を出し、中央銀行の金融政策委員会(MPC)メンバー3人を更迭しました。先月の利下げに反対票を投じたMPCメンバーは今回解任されたうちの1人です。今回の人事介入で、利下げ圧力に反対するメンバーはいなくなった模様です。

 

トルコでは2023年6月までに大統領選挙が実施される見込みです。利下げの背景は世論調査で支持率低下が鮮明となっているエルドアン大統領のあせりとも見られます。足元の世論調査で大統領の支持率は与党(AKP)支持者の間では8割程度を固めている(不支持も2割弱ある)ものの、他の政党支持者は9割前後が不支持となっており、全体で見ると支持が4割、不支持が6割弱と見られます。

 

トルコのインフレ率はリラ安を背景に2018年前後も高水準です。当時は格下げなどもありましたが、18年6月の大統領選挙を前にエルドアン大統領が金融政策に口先介入したこともリラ安要因でした。その点構図は似ていますが、足元のトルコの経済の状況にも不安の芽が見られます。

 

例えばインフレ率上昇の背後にある原油価格です。18年当時のブレント原油先物価格は概ね1バレルあたり70から80ドル強で推移していました。足元の原油先物価格は当時の最高値水準で推移しています。今後の原油価格動向次第ながら当面は物価上昇要因となりそうです。

 

経常収支にも懸念があります(図表3参照)。

 

月次、期間:2017年8月~2021年8月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表3]トルコの経常収支と観光客数(外国人)の推移 月次、期間:2017年8月~2021年8月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

トルコの8月の経常収支は約5億ドルとプラスを確保しましたが、これは今夏に観光客が戻った季節要因の影響と思われます。トルコの観光客数は夏がピークでその後は低下に向かい、経常収支も低下する傾向があります。加えて、コロナ禍前に比べ観光客のピークは低く、本格的な回復は来年以降と見られます。

 

原油価格や観光客数などは中央銀行が直接コントロールできない要因としても、インフレ局面でのマイナス実質金利の選択で市場の信頼回復を得るのは難しいと思われます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコリラ安の不思議な背景』を参照)。

 

(2021年10月22日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【12/8開催】企業オーナー向けの決算対策「オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【12/8開催】相続、事業・資産承継の悩みを解決する「民事信託」の具体的活用術

 

【12/11開催】ヘッジ・ファンドによる「グローバル成長株」投資の全容

 

【12/11開催】償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力<幻冬舎会場・限定版>

 

【12/14開催】新ルール対応の中小企業オーナー向け「法人保険」入門講座

 

【12/14開催】日本で買える「劣後債」投資の実情と具体的な取り組み方

 

【12/14開催】富裕層のための「スイス・ボーディングスクール」の知られざる魅力

 

【12/16開催】現地金融機関の融資を活用した「アメリカ不動産投資」の最新事情

 

【12/16開催】賃貸スタイルによって変わる「ハワイ不動産」投資効果を検証

 

【12/16開催】口座情報交換制度を踏まえた「海外活用」の進め方

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!