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トルコ中央銀行:市場予想より大幅な利下げを受け、通貨リラは最安値更新
トルコ中央銀行は2021年10月21日、金融政策決定会合を開催し、主要政策金利の1週間物レポ金利を年18%から2%引き下げ16%とすることを決定しました。
市場では1%もしくは0.5%の利下げが予想されていました。今回の決定はこれを上回る利下げで、利下げ決定後にトルコ・リラはドルに対して最安値を更新しました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:リラ安、更迭、大統領選挙、支持率、観光客
金利に対し独特の考え方をするトルコのエルドアン大統領が利下げに否定的とされる決定会合メンバー3人(含副総裁2人)を今月更迭しており、利下げ自体は予想されていました。しかし9月のコア消費者物価指数(CPI)を下回る水準に政策金利を引き下げたことからインフレ下ながらマイナス実質金利となっています(図表2参照)。政策動向がリラの動向を左右する展開が続きそうです。
トルコのエルドアン大統領は13日夜、カブジュオール中銀総裁との会談後の深夜に法令を出し、中央銀行の金融政策委員会(MPC)メンバー3人を更迭しました。先月の利下げに反対票を投じたMPCメンバーは今回解任されたうちの1人です。今回の人事介入で、利下げ圧力に反対するメンバーはいなくなった模様です。
トルコでは2023年6月までに大統領選挙が実施される見込みです。利下げの背景は世論調査で支持率低下が鮮明となっているエルドアン大統領のあせりとも見られます。足元の世論調査で大統領の支持率は与党(AKP)支持者の間では8割程度を固めている(不支持も2割弱ある)ものの、他の政党支持者は9割前後が不支持となっており、全体で見ると支持が4割、不支持が6割弱と見られます。
トルコのインフレ率はリラ安を背景に2018年前後も高水準です。当時は格下げなどもありましたが、18年6月の大統領選挙を前にエルドアン大統領が金融政策に口先介入したこともリラ安要因でした。その点構図は似ていますが、足元のトルコの経済の状況にも不安の芽が見られます。
例えばインフレ率上昇の背後にある原油価格です。18年当時のブレント原油先物価格は概ね1バレルあたり70から80ドル強で推移していました。足元の原油先物価格は当時の最高値水準で推移しています。今後の原油価格動向次第ながら当面は物価上昇要因となりそうです。
経常収支にも懸念があります(図表3参照)。
トルコの8月の経常収支は約5億ドルとプラスを確保しましたが、これは今夏に観光客が戻った季節要因の影響と思われます。トルコの観光客数は夏がピークでその後は低下に向かい、経常収支も低下する傾向があります。加えて、コロナ禍前に比べ観光客のピークは低く、本格的な回復は来年以降と見られます。
原油価格や観光客数などは中央銀行が直接コントロールできない要因としても、インフレ局面でのマイナス実質金利の選択で市場の信頼回復を得るのは難しいと思われます。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコリラ安の不思議な背景』を参照)。
(2021年10月22日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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