(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」です。資金繰りには、助成金や補助金、借金などの様々な手段がありますが、節税などによって手元のキャッシュを減らさない工夫も欠かせません。経営者には、資金繰りや節税のために生命保険を活用する人も少なくないでしょう。しかし、そのテクニックは本当に正しいのでしょうか? 資金繰り専門税理士が解説します。

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短期前払費用の一括損金算入は要注意

経費を支払ったら、早く損金に算入する。これは資金繰り経営の基本。

 

損金算入が早ければ早いほど、節税効果が早く得られる。前払いしているものがあれば、それらも損金に算入できるかどうか検討しよう。

 

通常、前払いした経費(前払費用)は、サービスの提供を受けた時に損金に算入する。

 

ただし、一定の条件(支払った日から1年以内に提供されるサービスであること、継続的に提供されるサービスであることなど)を満たしている前払費用は、短期前払費用として支払った時点で損金に算入できる。

 

対象となるのは、家賃、保険料、共済の掛金、会費など。これらを年払いすると、短期前払費用として今期の損金に算入できる。

 

今期の利益が多い場合などは、決算月の年払いで損金算入の金額を増やすことにより節税につなげることができる。決算月に生命保険に加入するケースなどがこれに当たる。

節税効果と「目先の資金状況」はトレードオフ

ただし、注意点が一つ。

 

支払金額が大きいものほど節税効果は大きくなる。しかし、大きい損金を作るということは手元の現金を大きく減らすことでもあるため、少し先の資金繰りは楽になるかもしれないが、目先の資金状況は悪化する。

 

つまり、年払いを検討する時は、支払後の現金残高をあらかじめ確認しておく必要があるということ。

 

決算月の2ヵ月後には法人税の納付があり、会社によっては賞与の支給日が近く、そこで大きく現金が減ることも考えられる。

 

また、融資を受けたい場合は決算時に現金を多く持っているほうが有利。

 

適切な現金を確保することを第一に考えて、度が過ぎた節税には注意しよう。

「小規模企業共済」は借金してでも満額掛けるのが正解

小規模企業共済。これは払ったほうがいい。しかも、満額掛けたほうがいい。

 

小規模企業共済とは、中小機構が運営する退職金の積立制度。

 

利用できるのは、経営者、役員、個人事業主などで、掛金を決めて積み立て、退職金を作ることができる。この制度が良いのは、掛金が全額所得控除になることだ。つまり、退職金を積み立てつつ、そのお金で節税できるというわけ。

 

節税額も大きい。仮に所得400万円の人が月々3万円ずつ積み立てていくと、年間の掛金は36万円になり、所得控除額が36万円になり、所得税と住民税が11万円ほど節税できる。

 

積み立てるだけで11万円のプラス。銀行に預金しても1円にもならない時代に、11万円のプラスである。そう考えると、小規模企業共済は、36万円の資金に11万円の利息がつくのと同じ。利率にすると30%。もはや預金している場合ではない。

 

しかも、これは3万円ずつ積み立てた場合で、掛金は1000円から500円単位で7万円まで自由に決められる。当然、掛金が多いほど所得控除の額も大きくなるので、できる限り掛けたほうがいい。

 

所得400万円の人が月々7万円ずつ積み立てるとどうなるか。節税効果は24万円に増える。そう考えると、「とりあえず1万円から」「まず3万円で」などと考える人もいるかもしれないが、借金してでも満額掛けるのが正解。

 

借金にかかる利息はせいぜい1%程度。しかし、節税金額の利回りはその何十倍にもなり、最大55%の利回りとなる。

 

超低金利からマイナス金利の時代に移っているからこそ、こういう制度は積極的に活用したい。

 

【図表】小規模企業共済による節税一覧表

加入するなら生命保険より「経営セーフティ共済」

資金繰りと節税を兼ねた施策として、生命保険に加入する人は多い。保険料を損金にして(保険料の50%までを損金に算入するなど)経費を作るというやり方である。

 

それも節税手法の一つだが、あまりオススメしない。

 

なぜなら、生命保険は満期前に解約すると返戻金が減るのが一般的。解約時の解約返戻率が8割だった場合、掛金の8割しか戻らない。

 

そこで検討したいのが、経営セーフティ共済。中小企業倒産防止共済制度とも呼ばれるもので、小規模企業共済と同様に、中小機構が運営している制度。取引先の事業者が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐためのもの。

 

特徴は2つ。1つは、担保なし、保証人なしで、回収困難になった売掛金や債権の額か、掛金の10倍(上限8000万円)まで借り入れることができること。

 

もう1つは、掛金を月5000円から20万円の間で設定でき、掛金を損金(個人事業主の場合は必要経費)にできるため、節税効果も見込めること。

 

生命保険と比較すると、中小企業倒産防止共済は、40ヵ月以上掛金を納めていれば、自己都合の解約であっても掛金が全額戻ってくる。掛金を減らすことなく、コストをかけることなく、節税効果を得ることができるというわけ。

 

さらに、生命保険は解約返戻率のピークの時期に解約しないと、目減り額が大きくなるが、中小企業倒産防止共済は契約開始時から40ヵ月以降であれば、いつ解約しても掛金が100%戻ってくる。その点で、生命保険よりも使い勝手がいい。

 

さらに、掛金は前納をすると若干だが割引が受けられる。そのため40ヵ月以降に解約すると、掛金が実質100%を超えて返ってくるのだ!

 

 

菅原 由一

SMGグループ CEO

SMG菅原経営株式会社 代表取締役

SMG税理士事務所 代表税理士

 

 

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※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

激レア 資金繰りテクニック50

激レア 資金繰りテクニック50

菅原 由一

幻冬舎メディアコンサルティング

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