(※写真はイメージです/PIXTA)

OECDの調査によると、日本でうつ状態にある人は2013年から2020年にかけて2.2倍に増加しています。決して他人事ではないうつ病。ここでは、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏が、精神疾患のある患者を取り巻いてきた歴史や、現在の治療・サポートについて解説していきます。

週に1度でも「人と触れ合う効果」ケアを受けるには…

デイケアは、社会生活機能の回復を目的としたプログラムを設計・提供し、グループごとに治療する施設で、居場所としての役割もあります。家に閉じこもりがちな人も、デイケアを利用することで適度な刺激を得られ、再発予防や回復促進の効果が期待できます。

 

たとえ週に1度でも出かける場所があって、人と触れ合ったり、リハビリができればそのメリットは非常に大きく、再入院の回避にもつながります。

 

同様の目的と内容で、ナイトケアやデイ&ナイトケア、ショートケアがあり、いずれも健康保険が適用されます。施設によりますが、医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士などが常駐しています。

 

訪問看護は、看護師や精神保健福祉士、作業療法士などの有資格者が定期的に自宅を訪問し、困りごとの相談に乗ったり、服薬支援、生活上のアドバイスなどの援助が提供される仕組みです。病状が悪化した際の早期発見にもつながります。こちらも健康保険が利用できます。

 

就労移行支援事業所は、就職を希望する人がそのためのサポートを受けられる施設です。一般企業への就職が難しい人には、働く場を提供する就労継続支援事業所もあります。

 

精神科ユーザーは、病状のため運動不足になったり、精神科の薬剤の副作用で体重が増加したりするなど、生活習慣病を合併するリスクが高い傾向があります。また、女性の場合、月経周期や女性ホルモンのバランスが精神症状に与える影響が大きくなります。よって時に、内科や産婦人科としっかり連携をとる必要が生じてきます。

 

また、調剤薬局では、日々発行する処方箋について薬剤師の立場からダブルチェックを行い、疑問がある場合は、疑義照会という形で連絡をとってくれます。

 

こうした施設で働いて患者と接する機会の多いさまざまな職能をもつ地域スタッフが、主治医と綿密に連携してこそ、地域の精神医療は高い効果を発揮します。

 

地域リソースを利用する患者は大きく3つのパターンに分けられます。

 

1つ目が、担当医だけでなく地域リソースが積極的に介入しなければ再入院が必要となる可能性が高いハイリスク群です。

 

2つ目が、入院リスクは高くはないけれど、サポートを怠ると引きこもりがちになったり生活リズムが崩れたりして病状が悪化するリスクが高く、デイケアなどで外出の機会と社会参加を目指すリハビリを必要とする層です。

 

そして3つ目が、これまで精神疾患とは無縁だったのに、突然うつ病になって仕事を辞めたり休んだりしている層です。このグループは、診察室での様子や本人の話からは十分回復しているように見えても、いざ職場に戻ると数週間ももたずに再発する、というケースが非常に多くあります。

 

復職に特化した慎重なサポートが必要で、担当医と地域リソースのスタッフとのより密な連携が重要になります。

次ページ「デイケアに来ても眠そう」と連絡があれば…

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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