「監禁・強制入院」の歴史…欧米に一足遅れた「精神疾患治療」 (※写真はイメージです/PIXTA)

OECDの調査によると、日本でうつ状態にある人は2013年から2020年にかけて2.2倍に増加しています。決して他人事ではないうつ病。ここでは、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏が、精神疾患のある患者を取り巻いてきた歴史や、現在の治療・サポートについて解説していきます。

【関連記事】精神科外来が「5分で診察終了」せざるを得ない恐ろしい理由【医師が解説】

精神疾患患者「監禁」「強制入院」の歴史を経て…

日本に限った話ではありませんが、精神疾患の患者を治療したり、自立や社会復帰を促すという考え方は比較的最近になってから主流となった考え方であり、歴史を振り返ると精神疾患の患者は長い間、監禁や隔離に近い形で社会から引き離されてきました。

 

日本では、1950年に制定された精神衛生法でようやく私宅監置が禁止されましたが、精神病院への入院を強制できる仕組みが創設されたこともあって精神病院の設立が相次ぎ、病床数が急増しました。

 

その後、長きにわたって入院患者が増えていきましたが、看護師が入院患者をリンチして死亡させるという「宇都宮病院事件(1984年)」などの不祥事が続いたことをきっかけに、1987年に精神保健法に改正されました。

 

精神保健法では、精神障害者の人権を守り、自立と社会経済活動への参加促進がうたわれたほか、デイケアなどの地域医療の取り組みも盛り込まれた点が画期的だったといえます。そして2004年には厚生労働省が、「入院医療中心から地域生活中心へ」とうたう精神保健医療福祉の改革ビジョンが示されました。

 

入院一辺倒を脱し、精神疾患の患者を地域医療でケアしていくという考え方は欧米では一足先に主流になっていましたが、こうした経緯を経てようやく日本でも、自宅で過ごして通院しながら社会のサポートを受けるという方向に変わってきたことはご承知のとおりです。

 

精神疾患の患者が最終的に目指すゴールは、その疾患を治すことだけではなく、自立と社会復帰であるということは援助者の共通認識です。

 

自宅で過ごす患者が社会とつながりをもちながら、自立して生きていくというゴールにたどり着くまでの道のりは長く、精神科医だけでサポートするには限界があります。

 

精神科デイケアやナイトケア、訪問看護、調剤薬局、就労移行支援事業所、そして地域活動支援センターなど、さまざまな地域の医療福祉を支えるリソースが協力してサポートしていくことが不可欠です。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!