「平均14万円」年金で親子が生活…介護ストレスと虐待の壮絶【介護のプロが解説】

「平均14万円」年金で親子が生活…介護ストレスと虐待の壮絶【介護のプロが解説】
※画像はイメージです/PIXTA

介護離職した人の6割が職場復帰できない、現在の日本社会。経済的に困窮したり、「介護疲れ」から高齢者への虐待が発生したりするリスクの高い状態にあります。その現状と、「介護サービス」などを使った正しい解決法について、介護事業を運営する、株式会社アテンド・代表取締役の河北美紀氏が解説します。※本記事は、書籍『身近な人の介護で「損したくない!」と思ったら読む本』(実務教育出版)より抜粋・再編集したものです。

「暴力」だけではない…虐待の「種類と原因」

2006年4月、高齢者虐待防止法が施行されました。高齢者が尊厳を保ちながら安心して暮らせるよう、必要な措置が定められています。厚生労働省の「高齢者虐待防止の基本」によれば、養護者による高齢者虐待の種類には、身体的・心理的なものから介護放棄といったものまであります。また、おもな虐待に至る原因としては、以下があります。

 

<おもな虐待の原因>

 

①介護の知識・情報不足

 

②認知症に伴う言動に対するストレス

 

③長期の介護によるストレス

 

④経済的な問題など
 

出典:厚生労働省「高齢者虐待防止の基本」
[図表5]養護者による高齢者虐待の種類 出典:厚生労働省「高齢者虐待防止の基本」

 

国民は高齢者虐待の通報義務がある

 

高齢者虐待防止法では、国民全般に高齢者虐待に係る通報義務を課しています。福祉・医療関係者に対しては、早期発見の協力を求めるとともに虐待発見時の相談窓口や通報の目安などに関する研修を行うことと定めています。

 

介護施設や養護者(高齢者を養護する家族など)による虐待の通報を受けた場合、市区町村は実態把握のため立入調査を行い、やむを得ない理由がある場合は面会制限などを行います。

 

また虐待は未然に防ぐことが最も重要なため、早期発見のために虐待が確定しているケースだけでなく、虐待の疑いの段階で通報することを求めています。自宅や介護施設から怒鳴り声や泣き声が聞こえる、お風呂に入っている様子がないなどの情報があれば、速やかにお住まいの市区町村に通報してください。

 

市区町村は高齢者だけでなく、養護者に対する支援として相談・指導・助言を行うとともに、負担軽減のために必要な措置を行います。

 

虐待が確認された場合は、高齢者が安心して暮らせる環境を作るよう双方への支援を行います。高齢者虐待は、養護者を加害者として捉えてしまいがちです。しかし、介護疲れや養護者自身がなんらかの支援(経済的・障害・疾病など)を必要としている場合も少なくありません。高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を「家庭全体の課題」として考え、高齢者・養護者・家族に対する支援を行っています。

 

自らが虐待加害者にならないために早めの相談を

 

介護をひとりで抱え込み、行きづまる前に地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。彼らは守秘義務があるため、金銭的・精神的悩みでも恥ずかしがる必要はありません。状況に合った適切なアドバイスをしてくれるはずです。介護はチームで行うもの。「あなたはひとりではない」ことを決して忘れないでください。

 

 

河北 美紀

株式会社アテンド 代表取締役

 

 

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