「貯蓄を切り崩しながらの生活」平均年金収入は…
厚生労働省の「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、高齢者の平均の月額年金収入は、厚生年金の方が14万3,761円、国民年金の方が5万5,708円という結果でした。
これは何を意味する数字でしょうか。もし介護離職をして収入が途絶えた場合、親の年金額がこの程度だとするならば、皆さんはいままで貯めてきた「貯蓄を取り崩しながらの生活が始まる」ということになります。
年金の受給額が少なくても、親には預金があるだろうとあてにしていたのに、実際には「貯蓄はあっても負債もあった」というのもよくある話です。というのも、日本には負債保有世帯が少なくないからです。
そのため、親にローンが残っていないか、貯蓄額はどうなっているかを事前に確認しておく必要があります。介護離職をした方の多くが「仕事復帰への不安」だけでなく「通帳を記帳する恐怖」「資産の目減りが怖い」「生活費の目算が甘かった」など、お金に関する厳しい現実を口にしています。
加害者家族の5割が「虐待の自覚がない」実態
厚生労働省の調査によると、令和元年度の家族や同居人などの介護者による虐待件数は約1万7,000件にのぼります。しかし、これは虐待と正式に認定された数だけで、暴力は存在したものの、虐待とまではいえないという「グレーゾーン」を含む通報件数は3万4,000件以上もありました。
また、虐待を受けている高齢者の約7割は、何らかの認知症の症状があるとされています。厚生労働省が家族間の虐待被害者・加害者双方に調査を行った結果、被害者である高齢者の約3割は「虐待をされている自覚がない」、加害者の家族の約5割以上が「虐待を行っている認識がない」と回答しました。
在宅介護は、高齢者虐待リスクと隣り合わせ
虐待の加害者は息子が約4割、夫が約2割。つまり6割以上が男性介護者によるものという統計が出ています。なお息子の場合は、未婚の息子において虐待リスクが高くなることもわかっています。
また、大都市で仕事をしながらひとりで介護している場合にも、虐待が生じやすくなると言われています。絶対的な存在であった親がだんだんできることが少なくなる姿に戸惑いを感じ、落胆やいらだちが生じて、虐待という悲劇へ発展するケースが多いようです。