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介護離職した人の「職場復帰」が難しい背景
[図表1]は、総務省が公表した介護離職者数のデータです。親の介護に追われ、仕事をやめざるを得なかった人は実に年間約10万人にのぼり、そのうち約8割が女性です。
さらに、介護離職時に仕事の継続希望があり、就職活動を行った家族介護者のうち、再就職できていない人は約6割にもなります。
つまりこれは、一度介護離職に至ってしまうと、半分以上の確率で職場復帰が難しくなることを意味しています。厚生労働省のデータをもとに、パナソニックエイジフリー株式会社が算出した「平均介護期間」は、男性9.79年、女性12.93年です。10年前後の長期間介護に追われることになれば、当然介護者のキャリアにも影響が出てきます。
ましてやその間、短時間就労ではなく仕事から完全に離れていたならば、現代の急速な社会変革についていけず、その影響ははかり知れないものとなります。築いてきたキャリアが通じなくなることにより、職場復帰が難しくなっていくのです。
正しい知識があれば介護離職は避けられる
残念ながら、現状の日本の企業において、社員の家族介護への理解が進んでいるとは決していえません。2019年に日本総合福祉アカデミーを運営する株式会社ガネットが40代以上の介護経験者の男女約450名にアンケート調査した、「介護離職に関する意識と実態調査」というレポートがあります。
それによると、約8割が「会社には相談しなかった」と回答し、同じく8割が「仕事と介護の両立は難しい」と答えています。さらにその半数強は、介護保険制度の活用はもちろん、「介護を何から始めてよいかわからなかった」と答えています。
介護離職から職場復帰するのが難しい大きな理由のひとつに、情報不足があるといえます。これは裏を返せば、介護保険制度の活用についての知識があり、「自ら介護」するのではなく、「介護サービスを利用」していれば、介護離職をせずにすんだ可能性があるということです。
現代の日本社会では、介護休業(通算93日)はおろか、介護休暇(年5日)の取得についてですら、まだまだ理解が進んでいません。介護保険制度を有効活用するやり方を知っているか否かがとても重要であるといえます。
一度介護離職をすると社会復帰が難しくなるからこそ、独力で対処するのではなく、ぜひプロの力を借りましょう。介護の一番の毒は誰にも相談できず自分だけで抱え込むこと、つまり「孤独」です。