(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差▲2.3の2ヵ月連続の下降、一致CI▲2.9と2ヵ月連続の下降

 

一致CIを使った景気の機械的基調判断は「改善を示している」で据え置き維持

 

 

 

●8月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲2.3の2ヵ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、新規求人数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与度に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の6系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●8月分の一致CIは前月差▲2.9と2ヵ月連続の下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の全系列が前月差マイナス寄与になった。

 

●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、20年8月分で「悪化」から「下げ止まり」へと13ヵ月ぶりに上方修正された。その後、20年9月分から12月分まで「下げ止まり」で同じ判断が継続した。21年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分~7月分と「改善」の判断は据え置きになっていた。

 

●今回8月分でも「改善」が維持された。景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正される条件は「3ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の累計)が1標準偏差分以上かつ当月の前月差の符号がマイナス」になることである。8月分は一致CIの前月差が下降である。しかし、8月分の3ヵ月後方移動平均は、前月差がマイナスだった7月分との2ヵ月合計でも前月差累計が▲0.57にとどまり、1標準偏差分の▲1.00には届かなかった。

 

●なお、9月分でも「改善」が維持されるためには、過去の数字が変わらないとすると、一致CIの前月差が0.0以上になる必要がある。

 

 

●8月分の先行DIは44.4%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になった。

 

●8月分の一致DIは43.8%と2ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率の3系列がプラス符号に、輸出数量指数1系列が保合いに、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の4系列がマイナス符号になった。

 

●10月25日発表予定の8月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は10月13日である。また在庫率関連データが10月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●8月分景気動向指数・改訂値で労働投入量指数が加わると、一致CIは今のところ若干下方修正される可能性があるとみられる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比▲0.3%の減少であることが判明している。一方、総実労働時間指数(調査産業計)は毎月勤労統計のデータで速報値の発表日は10月8日である。8月分確報値は10月22日に発表される。また、生産指数関連データが10月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが同じく10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●9月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。消費者態度指数、日経商品指数。消費者態度指数の3系列が前月差プラスである。中小企業売上げ見通しDI1系列が前月差マイナスである。

 

●また、9月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の3系列がプラス符号に、中小企業売上げ見通しDIの1系列がマイナス符号になることが判明している。9月分速報値段階の先行DIは33.3%以上88.9%以下になることが確定している。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年8月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

(2021年10月7日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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