8月分機械受注(除船電民需)は前月比▲2.4%と全体の季節調整値は2ヵ月ぶり減少
製造業・前月比▲13.4%と5ヵ月ぶり減少、非製造業・前月比+7.1%と2ヵ月ぶり増加
3ヵ月移動平均4ヵ月ぶりの減少等で「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断下方修正
7~9月期見通し前期比+11.0%達成には、9月前月比+31.0%が必要で厳しい状況
●8月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲2.4%と2ヵ月ぶりの減少になった。また、3ヵ月移動平均は前月比▲1.0%で4ヵ月ぶりの減少になった。一方、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+17.0%で5ヵ月連続の増加になった。
●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回7月分では該当なしだったが、今回8月分でも該当なしだった。
●8月分製造業の前月比は▲13.4%と5ヵ月連続の減少になった。8月分の製造業では17業種中、6業種で増加し、減少は11業種だった。電子計算機等、「その他重電機」といった情報通信機械などが増加に寄与したが、電子計算機等、冷凍機械といった電気機械、運搬機械、風水力機械といった汎用・生産用機械などが減少に寄与した。
●8月分非製造業(除船電民需)の前月比は+7.1%と2ヵ月ぶりの増加になった。7月分では大型案件がなかった電力業は、8月分では発電機1件があった。電力業の前月比は▲9.9%で2ヵ月連続の減少となった。8月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比▲1.2%と2ヵ月連続の減少になった。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。運搬機械、電子計算機等といった卸売業・小売業などが増加に寄与し、電子計算機等、運搬機械といった金融業・保険業などが減少に寄与した。
●大型案件は、前回7月分は全体で2件だった。内訳をみると、2件とも官公需で、防衛省1件(航空機)、地方公務1件(その他産業機械)であった。今回8月分は全体で6件。内訳をみると、前述の電力業1件、官公需のその他官公需が2件(船舶、その他産業機械)、外需が3件(火水力原動機2件、航空機1件)である。
●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は8月分前月比+1.2%と2ヵ月ぶりの増加となった。一方、前年同月比は+23.3%と5ヵ月連続の増加になった。
●外需は、8月分の前月比が▲14.7%と2ヵ月ぶりの減少になったが、前年同月比は+49.6%で5ヵ月連続の増加になった。
●内閣府の基調判断の推移をみると、20年12月分では「持ち直している」に3ヵ月連続で上方修正となった。21年1月分では「持ち直している」で内閣府の基調判断は据え置きであった。2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、3月分・4月分でも同じ判断だった。5月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、6月分に続き前回7月分でも据え置きとなっていた。今回8月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正された。機械受注(除船電民需)の前月比がマイナスで、そして3ヵ月移動平均が4ヵ月ぶりにマイナスに転じたことなどから、総合的に判断しているようだ。
●機械受注(除船電民需)の7~9月期は前期比+11.0%の見通しである。見通しを達成するためには、9月の前月比が+31.0%増加することが必要で、見通し達成は厳しい状況だ。
●機械受注(除船電民需)の7~9月期・前期比実績は09年(平成21年)から昨年までの12年間でみると、上振れ10回、下振れ2回であり、上振れしやすい傾向がある四半期であるが、今年は下振れる可能性が大きそうだ。但し、9月の前月比が0.0%でも7~9月期の前期比は+0.7%と2四半期連続の増加になる。今月の製造業の前月比大幅減少に、半導体不足の影響があるかどうかは機械受注統計ではわからないようだ。足踏みの判断になったものの、設備投資の基調には底堅さが感じられる状況ではあるだろう。
●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIは、20年1月の現状判断DIが52.8(回答数9人)と景気判断の分岐点50を上回り底堅さが感じ取れる感じだったが、20年4月に新型コロナウイルスの影響で現状判断DIが10.0(同5人)へと急落した。4月を底に多少の上下はあったものの11月は50.0(同13人)まで持ち直した。しかし、その後は新型コロナウイルス感染状況に翻弄されるように、21年2月に37.5(同14人)と低下した。その後、21年3月47.5(同10人)、4月44.4(同9人)、5月45.0(同5人)、6月50.0(同7人)、7月50.0(同7人)、8月45.8(同6人)、9月47.7(同11人)と推移している。9月では「製造業では設備投資に対して積極的になっている。」、というコメントをする景気ウォッチャー(北陸・一般機械器具製造業〔総務担当〕)がいた。
●一方、設備投資関連・先行き判断DIは20年4月には18.8(同8人)と弱含んだ。新型コロナウイルスの影響によるところが大きい。4月をボトムに持ち直し、一進一退状態もあったが、21年1月64.3(同7人)まで戻した。その後、2月44.4(同9人)、3月55.6(同9人)、4月46.9(同8人)、5月37.5(同6人)、6月43.8(同4人)、7月43.8(同8人)と推移し、8月28.7(同7人)に落ち込んだ後、9月53.6(同7人)と6ヵ月ぶりの50超になった。9月では「緊急事態宣言解除後に、設備投資意欲が向上することを期待している。(北海道・その他サービス業[建設機械リース]〔支店長〕)」、というコメントがあった。
●日本工作機械工業会によると、9月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+90.2%と、3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%、7月分+82.9%、8月分+93.2%に続き、7ヵ月連続の増加になった。新型コロナウイルスの影響が出ていた前年の反動の影響が大きいが、加えて生産設備需要が増加しつつある面もあるようだ。機械受注統計での民需からの工作機械受注も同様の動きになっている。8月分の前年同月比+91.4%と、3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%、6月分+77.2%、7月分+84.8%とに続き6ヵ月連続の増加である。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年8月分「機械受注」のデータ』を参照)。
(2021年10月13日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト