訴訟は時間がかかる?とるべき法的手続は…
このケースのように、立ち入りが必要な専有部分の区分所有者が立ち入りを拒んでいる場合、管理組合としてはいかなる法的手続をとるべきでしょうか。
この点、緊急性を要するため、通常の民事訴訟を提起していては、手遅れになってしまうおそれがあります。そこで、仮処分命令の申立てを検討すべきです。
仮処分が認められるためには、「被保全権利」と「保全の必要性」という要件を満たす必要があります。
「被保全権利」の要件においては、仮処分で保全されるべき権利の存在があることを疎明する必要がありますが、上記のとおり、管理組合は(標準)管理規約23条1項、2項、4項に基づき、専有部分への立入権(立ち入り請求権)を有します。
「保全の必要性」は、本訴が終わるまで待っていては権利の実行が困難になる場合に認められます。この点、このケースにおいては、またいつ漏水が発生するかわからない状況が続いており、漏水が再発した場合には、101号室の建具等が汚損するなどして被害が拡大するおそれがありますので、まさにこの要件を満たすといえます。
香川 希理
香川総合法律事務所 代表弁護士