※画像はイメージです/PIXTA

マンションの近隣トラブル。自分の部屋の「漏水」が別の部屋へ被害をもたらしているにも関わらず、補修工事に協力しない住人がいたら、どう対処すればよいのでしょうか? .「管理組合からの質問」に、香川総合法律事務所・代表弁護士の香川希理氏が答えます。 ※本連載は、書籍『マンション管理の法律実務』(学陽書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

では管理組合は、201号室内に立ち入ってよいのか?

このケースのように専有部分床下の配管を工事するためには、専有部分である住戸内への立ち入りが必要ですが、専有部分たる住戸については、当該区分所有者以外は立ち入ることができないのが原則です。

 

それでは、管理組合は、専有部分たる住戸に立ち入ることができないのでしょうか。

 

この点、標準管理規約上、「前2条により管理を行う者は、管理を行うため必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。」(同規約23条1項)、「前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」(同2項)とされています。

 

すなわち、管理組合は、上記規約を根拠として、当該区分所有者に対し、管理規約に基づき、本件建物に立ち入ることを請求し、同室において漏水補修工事を行う権利を有します。一方、当該区分所用者は、上記規約によって、管理組合が本件建物に立ち入ることを受忍すべき義務があります。

 

ただし、上記規約によって管理組合に認められる立ち入り請求権は、いわゆる請求権であって、当然に立ち入ることができるわけではありません。したがって、立ち入りを拒否する者に対しては、判決を得て立ち入らなければなりません(前掲『コンメンタールマンション標準管理規約』83頁)。

 

しかし、東日本大震災の影響等を受けて、平成28年標準管理規約改正において、緊急時における専有部分等への立入権を認める規定が追加されました。

 

すなわち、「理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。」(同規約23条4項)とされています。

 

ただし、このケースのように、一旦漏水がおさまっている場合などは、同規約を根拠に強引に立ち入るのではなく、法的手続をとるべきです。

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トラブル事例でわかる マンション管理の法律実務

トラブル事例でわかる マンション管理の法律実務

香川 希理

学陽書房

【マンショントラブルの法的対応が、具体的な事例からわかる!】 専門性の高いマンション管理の法的トラブルは、意外な落とし穴が数多く存在します。 実務経験の豊富な著者が、初任者がつまずきやすい論点もやさしく解説。 …

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