1―岸田氏もスタートアップ支援の強化を掲げる
9月29日投開票の自由民主党総裁選で勝利した岸田文雄氏が、10月4日召集の臨時国会で第100代の首相に指名された。総裁選では、「成長なくして分配なし」とする一方で、「分配なくして次の成長なし」とも主張し、成長と分配の好循環による新たな日本型資本主義の実現、これまでの新自由主義的な政策からの転換を掲げた。「令和版所得倍増のための分配施策」として、子育て世帯の住居費や教育費の支援や看護師、介護士等の収入増などを打ち出している。
一方の成長戦略としては、「科学技術立国」や「デジタル田園都市構想」の実現などに加えて、「スタートアップへの徹底支援」が掲げられた[図表1]。オープンイノベーションへの税制優遇や政府調達を通じた支援などを具体策として提示している。スタートアップ支援という点では、岸田新政権のもとでも、成長戦略として支援を強化してきた安倍政権、菅政権の流れを受け継ぎ、一層強化することを視野に入れていると見られる。
より具体的な政策の中身はこれからだが、科学技術立国の実現に向けて、10兆円規模の大学ファンドの創設や研究開発などを行う企業を支援する大胆な税制などを掲げ、科学技術とイノベーションへの投資を抜本的に拡大させることへの意欲を見せていることから、創薬やバイオテクノロジー、再生可能エネルギーなどのクリーンテクノロジーなどを手掛ける研究開発型スタートアップ、大学発スタートアップの支援が拡充されることにも期待がかかる。また、デジタル田園都市構想の実現に向けて、デジタルインフラの拡充やデジタル技術の社会実装が推し進められ、より世の中のデジタル化の機運を高めることができれば、シニア層や中小・零細企業へのデジタルサービスなどを手掛けるスタートアップやフリーランスのビジネスチャンスが広がることも考えられる。