(※写真はイメージです/PIXTA)

今、世界から注目を集めているのが、アリババが推進する新しい小売戦略「ニューリテール」だ。アマゾン、ウォルマートも真似るという「ニューリテール」とはいったい何か。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

目を覚ました小売最大手の快進撃が始まった

■デジタルシフトで苦境から脱出を図るウォルマート

 

2015年の晩春、私はアーカンソー州ベントンビルのウォルマート本社に招かれた。世界各地から集められた同社経営幹部向けに2つのプレゼンテーションを行うためだ。まさにその年、アマゾンが時価総額でウォルマートを初めて上回ったのである。この歴史的事件を受けて、ウォルマート社員の間に明らかに動揺が広がっていた。

 

売上高についても、非常ベルが鳴り響いていた。実際、2015年は上場以来、初の減収となるのだった。成長しか知らない企業にとっては、衝撃的な現実を突きつけられた瞬間でもあった。

 

その日、私は同社幹部を前に、相変わらずの歯に衣着せぬ物言いで、緊急提言をした。ウォルマートがビジネスを進化させる過程で、まかり間違えば命取りとなりかねない重要な変化があったのに見落としていたと私は指摘した。デジタル化とECサイト構築に投資する余裕もあったし、実際にそうすべきだったにもかかわらず、スーパーセンター業態の増強に投資を振り向けていたからだ。

 

仮にウォルマートが本気でオンライン投資に動いていたら、今ごろ「アマゾン」と言われて最初に人々が思い浮かべるのは南米を流れる川の名前に過ぎなかっただろうし、アマゾンがウォルマートを蹴散らすような存在にはなっていなかったはずだ。

 

ウォルマートが今すぐ大きく軌道修正をし、クラス最高水準のデジタルコマースのプラットフォームで実店舗での体験を補完できなければ、アマゾンにバラバラにされかねないと警鐘を鳴らした。ウォルマートがどう思おうと、消費者はデジタルの世界に突き進んでいるのだから、ウォルマートが自ら消費者の先頭に立って走るか、消費者にそっぽを向かれるかのいずれかだと訴えた。あの日、本社で伝えたメッセージを一言で言えば、「変革か死か」だった。

 

私は、プレゼンテーションを終えてから、遅ればせながら関係者から2つの事実を知らされた。1つめは、ウォルマート社内で保守派と改革派による激しい文化戦争が勃発していたことである。

 

一部の古参幹部は、ウォルマートを正常な状態に連れていってくれる船があるとすれば、それは本業回帰の船であり、つまりは巨大スーパーセンターに注力することにほかならないと強く信じていた。彼らの頭のなかでは、スーパーセンター業態から離れるのではなく、一層の強化こそが答えだった。一方、改革派の幹部は、まったく逆の考えだった。オンライン販売こそが救世主であり、同社を未来に運んでくれる新しい船を造ることに重点的に投資すべきだというのが、改革派の意見だった。

 

あの日の私のメッセージが背中を押したのか、他の影響があったのかはわからないが、同社の方向転換が実現した。目にもとまらぬスピードでイノベーションが進む小売業界で、ウォルマートは、急激に時代遅れになっている自社の現実に気づき、ようやく目を覚ましたのだ。ひとたび目を覚ますや、同社の快進撃が始まった。

 

2016年、ウォルマートはネット通販のジェット・ドット・コム(Jet.com)を33億ドルで買収し、創業者のマーク・ロアがジェットの機能をウォルマートの枠組みに統合する役割を担うことになった。

 

2017年には、ウォルマートに関する報道にも「転換」という言葉がたびたび見られるようになった。ある記事では次のように報道された。

 

ウォルマートの転換が功を奏しているが、そこに何らかの疑念があるとすれば、まだ問題を葬り去っただけということだ。火曜日(2017年10月10日)の投資家向け会議で、この1年の年次活動指針を発表し、2019年度に調整後EPS(1株当たり利益)5%増を掲げた。つまり4年ぶりの増益を目標に設定したのである。

 

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