患者満足を向上させることが、医師にとっても重要である理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

患者満足の向上は、苦情、医療過誤訴訟を軽減させ、死亡率の低下に貢献しているという。患者満足は、ロイヤルティを形成し、新しい患者を連れてくる効果を発揮するなど、多くの結果を導く重要な指標となっている。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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患者満足に不可欠なコミュニケーション

本連載では、慢性疾患患者を対象としていることから、慢性疾患患者が多く利用する外来診療に焦点をあてて、患者満足の研究を整理する。この領域においては英国、米国の研究が先駆的、代表的であることから、英国、米国と日本の3カ国の文献を中心にまとめ、外来診療の患者満足について理解を図る。

 

■患者満足に影響を及ぼす様々な要因

 

患者満足に影響を及ぼす要因は何であろうか。様々な患者満足の研究から、患者満足に影響を及ぼす要因をまとめる(表)。

 

例えば、Ware et al.(1983)による米国の文献レビューでは、患者満足に影響を及ぼす要因として、①医療職との対人関係の方法、②ケアの技術的な質、③アクセスの良さ、④財務状況、⑤ケアの有効性、⑥ケアの連続性(患者の様々なステージに関わること)、⑦物理的環境、⑧医療機関に対する利用のしやすさの8次元に分類している。

 

Baker(1991)は、英国のプライマリ・ケアにおける患者満足の5つの要素として、①医師の利用のしやすさ、②治療の質、③ケアの連続性、④建物、⑤診療時間の利用のしやすさを挙げている。

 

Mciver(1991)は、外来診療に関する患者満足について、①スタッフの態度、②待合室の環境、③待ち時間を要素として取り上げている。

 

Mittal(2016)は、プライマリ・ケアに関する患者満足は、①スタッフとの対話(相互作用)、②サービス提供、③ケアの結果、④物理的施設(構造物)などで構成されていることを示している。

 

これら、患者満足に影響を与える要因を、(1)患者満足とケアの対人的な側面、(2)患者満足とケアの技術的な側面、(3)患者満足とアクセスと物理的環境、(4)患者満足に関連するその他の研究という4つに分類して整理する。

 

出所:Ware et al.(1983)、Baker(1991)、Mciver(1991)、Mittal(2016)を参考に筆者作成。
【図】患者満足に影響を及ぼす要因 出所:Ware et al.(1983)、Baker(1991)、Mciver(1991)、Mittal(2016)を参考に筆者作成。

 

(1)患者満足とケアの対人的な側面

 

多くの研究において患者満足に影響を及ぼす要因は、コミュニケーションを中心としたケアの対人的側面が取り上げられ重要視されている。例えば、Tishelman(1994)によると、患者は技術的なケアよりも、親切さ、コミュニケーションを通した友好性、感情的な面へのサポートに重点を置いている(Sitzia & Wood, 1997)。患者の不満は、自分の病状などの医療に関する情報の不安から引き起こされており、医療職による情報提供は重要である(Ong etal., 1995)。

 

医師と患者のコミュニケーションでの非言語的メッセージの重要性も報告されており、LaCrosse(1975)は、医師の少しの前傾やうなずきといった非言語的な態度は、患者に医師をより暖かく魅力的に見せることを明らかにしている。また、Larsen and Smith(1981)も、医師の前傾や位置・姿勢は、患者のより高い満足に関連していることを報告している(Sitzia &Wood, 1997)。

 

我が国の患者満足研究でも、医師の対応や話しを聞く態度、説明のわかりやすさは、患者満足の向上に影響を与えていることが報告されている。

 

例えば、杉本ほか(2018)によると、コミュニケーションや傾聴能力を含む医師の態度、治療に関する説明を含む医師のスキルが患者満足に影響を及ぼしていた。今中(1993)による大学病院の外来患者調査では、医師の態度や言葉遣いが満足に有意な結果を示していた。田久(1994)によると、医師の対応、医師の説明のわかりやすさが満足に影響を及ぼしている。前田・徳田(2003)は、プライマリ・ケアでの外来患者の満足調査において、満足に強く影響するのは、医師の説明のわかりやすさ、医師が訴えを聞いてくれた、などのような医師とのコミュニケーションが重要であることを指摘している。

 

看護師や医療スタッフによる患者満足への影響については、Pascoe and Attkisson(1983)によると、患者満足の重要な要素は看護師の態度であり、続いて治療の結果、医療スタッフの態度であることを示しており、看護師や医療スタッフの影響を指摘している。今中(1993)の病院調査では、看護師、一般事務の対応は、患者満足、継続受診意向に正の影響を与えていた。

 

長谷川・杉田(1993)の病院調査では、看護師の態度が患者満足に影響を及ぼしていた。しかしながら、事務系職員の態度は満足に影響を与えていなかった(Pascoe, 1983)。

 

一方、Fitzpatrick et al.(1992)の看護師に関する文献レビューでは、看護師のコミュニケーションは、患者の満足を得られていない結果が報告されている。杉本ほか(2018)の診療所の調査では、看護師の態度を含めたスキルは患者満足に影響を与えていない結果が報告されている。山本ほか(2004)による診療所の外来患者による患者満足調査でも、看護師全般は患者満足に影響を与えていないことが指摘されている。

 

整形外科診療所の看護職に関する研究では、患者にとり看護師の関わりの成果は見え難く、患者が評価し難いことによる看護上の困難さを問題視しており(堀之内ほか,2016)、診療所の看護師については患者満足に影響していない一致した結果が報告されている。

 

医師による精神的苦痛の軽減や、医師の専心と思いやり、プライバシーへの配慮なども、患者満足の重要な要因として多くの文献で示されている(今中,1993;長谷川・杉田,1993)。杉本ほか(2018)は、自覚症状や不安などが強く、QOLの低下が推測できる脳血管疾患や関節リウマチなどの整形外科疾患、自己管理が困難な糖尿病などの内分泌代謝疾患では、医師による精神的苦痛の軽減が医師スキルの中で最も重要視され、患者満足に影響を与えていることを明らかにしている。

跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

中央大学大学院戦略経営研究科修士課程(MBA)を首席で修了、同大学院同研究科博士課程にて博士(経営管理)取得。医療福祉専門学校の学校長を経て現職。医師会・医療機関・製薬会社等で講演活動を行う。専門は医療マーケティング論、マーケティング論、企業マネジメント論など。

著者紹介

連載「患者インサイト」患者の深層心理がわかれば医療現場が変わる

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

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