(※写真はイメージです/PIXTA)

アパート経営は入居者が決まらなければ始まりません。しかし、過去の住宅不足の時代から同じ手法を踏襲している仲介会社に頼んでしまうと、いつまでたっても空室が埋まらないということになりかねません。オーナーは状況を打開してほしくてヤキモキしても、背景には業界ならではの様々な制約があるのです。専門家が分かりやすく解説します。

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賃貸物件は供給過多、客付けを1社に頼るのは非効率

アパートオーナーのなかには、仲介会社が1社でも空室は埋まるのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

住宅不足の時代であれば、1社が単独で客付け(仲介)をしてもすぐに埋まっていました。しかし現在は、供給過多の時代です。街に何十社、何百社と客付け(仲介)をしている仲介会社がある中で、1社で入居者を待ち構えているだけ、ということがどれほど非効率的なことかは、おわかりいただけるでしょう。

 

それは例えるなら、1カ所で1本の竿だけで釣り糸を垂らしているようなものです。当然何十、何百の竿で方々から釣り糸を垂らすほうが、魚が釣れる確率は上がるに決まっています。実際、大宮(さいたま市)のアパートを客付けしてくれる仲介会社は1000社にも上ります。

 

募集の間口を幅広く持ち、物件の所在するエリアの全賃貸仲介会社から入居希望者の紹介をしてもらえる仕組みを構築する必要があります。

 

 

また、賃貸仲介会社は、通常は管理も行っている「一体型」の場合がほとんどですが、その場合、自社の管理物件以外は入居希望者に紹介しないのではないかという見方もあるかと思います。

 

もちろん、自社管理の物件を優先的に紹介するという傾向は事実としてあります。

 

しかし、当社の経験している数多くの実例では、基本的に賃貸仲介の営業マンにとっては管理物件かどうかは関係ないというのが結論です。

 

実際に一体型の仲介会社がどのような割合で客付けをしているかというデータを取っています。会社によって個別性が強いものの、大宮周辺のエリアで自社管理物件50%、一般物件(主に自主管理しているオーナーの物件)50%という割合です。都心に行けば一般物件の割合が増え、田舎に行けば自社物件の割合が増えるというイメージです。

 

これには三つの理由があります。

 

一つめの理由は、同じ会社(もしくはグループ会社)であっても、部署(担当)によって立場が違うということ。賃貸仲介の営業マンは自社(もしくはグループ会社)が請け負っている管理物件の入居率に対してノルマがあるわけではなく、自分の(店長であれば店全体の)仲介手数料(広告料)の売上に対してノルマがあるのです。

 

実際に当社の物件には、仲介と管理を一緒に行っている「一体型」大手チェーン店からの入居者紹介も多いのが実情です。彼らの意見を聞いてみると、「やっぱり売上です」という意見がほとんどです。

 

歩合制である現場の賃貸仲介営業マンの立場としては、あくまでも自分の毎月の売上が上がればよいというのが本音なのです。そのため、仲介手数料が得られる、さらには、より多くの仲介手数料が得られると思えば、喜んで入居者を紹介してくれます。

 

二つめの理由としては、「一体型」の管理会社自体の空室率が2割以上もある会社がざらにあることです。

 

もし「一体型」の管理会社の管理物件の入居率がすべて100%近いなら、管理物件を優先するという証明になりますし、「一体型」の管理会社に頼む理屈もあるのですが、残念ながらそうではありません。たとえ入居希望者を自社管理物件に優先的に案内するとしても、自社管理物件の空室率が2割以上もあるようであれば、その管理物件内での競争が発生してしまいます。

 

そして三つめの理由としては、入居希望者に対して自社の管理物件だけを紹介していたら、商機を逃してしまうということが挙げられます。管理戸数にもよりますが、自社管理物件だけでは入居希望者への提案が限られてしまい、他の仲介会社に行かれてしまうのです。かつての「ナショナルショップ」のような家電メーカー系列の販売会社がナショナル商品だけを販売していては集客できません。他社商品も併せて取り扱わないと、お客様にとっては魅力がないのです。

 

以上の理由から、多くの会社に依頼する方が、1カ所で一生懸命募集をかけるよりも圧倒的に効率が良いのです。

 

次ページ「一体型」の管理会社には他社からの客付けがないワケ

※本記事は、『空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

[増補改訂版]空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

[増補改訂版]空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

大谷 義武,太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

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