(※写真はイメージです/PIXTA)

アパート経営は入居者が決まらなければ始まりません。しかし、過去の住宅不足の時代から同じ手法を踏襲している仲介会社に頼んでしまうと、いつまでたっても空室が埋まらないということになりかねません。オーナーは状況を打開してほしくてヤキモキしても、背景には業界ならではの様々な制約があるのです。専門家が分かりやすく解説します。

「一体型」の管理会社には他社からの客付けがないワケ

では、「一体型」の管理会社でも他の仲介会社に入居希望者の紹介(客付け)を依頼すれば空室が埋まるのではないか、と思われた方もおられるのではないでしょうか。

 

下記の図表をご覧ください。自社で賃貸仲介店舗を持っている「一体型」の管理会社が、他社に客付け(仲介)の依頼をした場合の流れです。この通りに他社は入居付け(紹介)をしてくれるのでしょうか? 残念ながら答えはNOです。理由を見ていきましょう。

 

少ない報酬では、他の仲介会社からの客付けが見込めない

 

●広告料、仲介手数料の問題

まず、一番重要な広告料と仲介手数料の問題があります。

 

通常この場合の報酬分配は「分かれ」ということになってしまい[図表1]も合わせて参照)、お客さんを紹介する客付会社の売上は、入居者からもらう家賃1カ月分の仲介手数料のみになってしまいます。

 

住宅不足の時代であれば、紹介できる物件があるだけでよい、といったケースもあったのですが、ご存知の通り現在は住宅が余っている時代です。紹介できる物件は山のようにあるのです。

 

そんな状況下で、賃貸仲介の営業マンが、自社の管理物件でもなく、かつ家賃1カ月分の仲介手数料しかもらえない物件を紹介するということは、まずあり得ません。

 

●鍵の問題

賃貸仲介の営業現場はその一瞬が勝負です。店頭にお客さんが来てやりとりをし、その場で案内に行きます。すると、空室の鍵の所在が重要になります。できれば手間なく鍵を取って空室を案内したいものです。

 

しかし、「一体型」の会社は、自社で客付けすることを前提にしていますので、基本的には鍵を自社で保管しています。すると、仲介(客付け)会社は「一体型」の管理会社の店舗に鍵を取り(借り)に行かなければいけません。これを営業マンは非常に嫌うのです。

 

細かいことですが、このように鍵の所在によって案内したくなくなってしまうケースが多いのが、賃貸仲介の現場の状況です。

 

ちなみに、当社の管理物件においては、鍵はすべて現地で対応できるようにしてあります。各賃貸仲介の営業マンがダイレクトに物件にお客さんを案内できるためです。

 

●ライバル同士

賃貸仲介の店舗を並べている会社同士ですから、どうしてもライバルの関係になります。同じ街で同じ業務を行っているわけですから当然です。

 

そして、ライバルの物件に入居希望者を紹介するというのは敵に塩を送るようなものです。当然営業マンが嫌がるのは、致し方ありません。

 

住宅が余っている時代に、何もライバルの物件にしかも僅かばかり(1カ月分)の仲介手数料のために、貴重な入居希望者を紹介して、「敵」を助けるようなことをする必要があるのか、ということです。

 

●オーナーの顔が見えない

不動産の取引は売買でも賃貸でも同様ですが、物件の所有者や貸主の顔が見えないところでの取引は非常にしにくいものです。なぜなら、物件の事情がわからないからです。「一体型」の専任物件に客付け(仲介)する立場は、オーナーと遠い関係のため、この点からも入居希望者を紹介しにくい状況になります。

 

以上のように、「一体型」の管理会社は、自社以外からの客付け(仲介)はあまり期待できません。最終的には自社での客付け(仲介)に頼らざるを得ないために、どうしても自社店舗のみという形で間口は狭くなってしまうのです。

 

 

大谷 義武
武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役

 

太田 大作
武蔵コーポレーション株式会社 専務取締役

 

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※本記事は、『空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

[増補改訂版]空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

[増補改訂版]空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

大谷 義武,太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

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