「自社で賃貸仲介店舗を持つ」管理会社は、誰の味方?
管理会社が自社で賃貸仲介店舗を持つことの弊害は、その立ち位置に表れます。まず、「一体型」の管理会社の最も基本的な問題点として、立ち位置が曖昧になってしまっている点が挙げられます。要はオーナーさんと入居者のどちらの立場に立った仕事をするのかということです。
管理会社は、アパートオーナーさんから管理費をもらって業務を遂行しますので、基本的にはオーナーさんのために働くべきものであるはずです。しかし「一体型」の管理会社は、自社で仲介店舗を持っているために、その立場は極めて曖昧なものになってしまいがちです。
一例として、まず空室を埋めるに当たり、その店頭で客付け(仲介)をします。そして入居者とオーナーさんの双方の間に立つ立場として契約を結びます。
このとき、「一体型」の管理会社(賃貸仲介会社)が、入居者とオーナーさんの双方の利益を代弁する立場となってしまっていることが、おわかりいただけるでしょうか?
この場合の管理会社は、オーナーさんからだけではなく、入居者からも仲介手数料を受け取ります。そのため、「一体型」の管理会社にとって入居者は「お客様」になります。ということは入居者のために、オーナーさんに対して家賃の値引き交渉をする立場にもなるのです。
これは入居者の利益のために、オーナーさんの利益を減ずる行動です。つまり「一体型」の管理会社は、オーナーさんの利益と相反する(利益相反)立場となってしまうのです。
昔であれば、住宅が不足していたため、家賃の交渉などは基本的には行われませんでした。そのため、この管理会社の立場の曖昧さや利益相反の関係が単に表面化しなかっただけなのです。
このように、「一体型」の管理会社は、その性質上必ずしもオーナーさん側に立って、オーナーさんの利益を最大化するために業務を行っているとは言えない部分があります。利益相反の関係の中で管理を請け負っていると言えます。
例えるなら、裁判において相手方の弁護士に依頼し、間に入ってもらって裁判を行うようなものです(弁護士法では禁止されていますが)。
加えて、すでに述べたように、ほとんどの「一体型」の管理会社は、住宅不足の時代だからこそ問題がなかった「受け身型」の管理姿勢であることも大きな問題です。
管理会社も委託しているオーナーさんも、このような問題を抱えたまま、今後の賃貸市場において生き残っていくことは、困難になっていくことでしょう。
大谷 義武
武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役
太田 大作
武蔵コーポレーション株式会社 専務取締役
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