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給与収入が平均でも「月に5万5000円不足」という試算
今、わが国では、長生きを「リスク」であるととらえる人が増えています。
その背景には、老後生活の経済面での不安があることはいうまでもありません。もし長生きを「してしまった」場合に、果たしてお金は足りるのだろうかという不安です。
それを裏付けるデータの一つとして、例えば公益財団法人生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、老後生活に「不安感あり」とする人は84.4%と8割を超えています。
また、その不安の内容としては、「公的年金だけでは不十分」と答えた人が82.8%、「退職金や企業年金だけでは不十分」と答えた人が38.8%、「自助努力による準備が不足する」と答えた人が38.5%など、経済的な面での不安を挙げた人が、大半を占めています。
これらの不安感に、根拠がないわけではありません。それは公的年金制度(国民年金、厚生年金)だけでは到底生活費をまかなえないことは当然だとしても、今後、人口減少と少子高齢化が進んでいけば、現在の給付水準でさえ維持できず、さらなる支給開始年齢の引き上げ、給付金額の減額などがなされるのは間違いない、という心配です。
それが顕在化したのが、2019年の「老後2000万円問題」でした。老後2000万円問題自体は、誤解を孕(はら)んで伝えられた部分もありましたが、あれだけ話題になったのは、多くの人々が漠然と感じていた不安が前提にあったからだと考えられます。
2019年6月、金融庁・金融審議会の市場ワーキング・グループによる報告書「高齢社会における資産形成・管理」のなかに、老後の経済生活について記載した部分がありました。
同報告書によると、平均的な収入のサラリーマンが65歳で退職したあと、平均的な支出で老後の生活をした場合、年金が現在の水準でもらえたとしても、月に5万5000円が不足するとされています。
95歳まで生きると仮定した場合(65歳の退職時から30年間)では、5万5000円×360ヵ月=1980万円となり、約2000万円が不足することになります。これがいわゆる「老後2000万円問題」と呼ばれた計算の根拠でした。
では、本当にそんなにお金が足りなくなるものなのか、もう少し詳しく見ていきます。