「書面による決議」で定期総会は回避できない
■書面による決議
標準管理規約50条に「規約により総会において決議をすべき場合において、組合員の全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる」と規定されています。これとよく似たもので、総会を欠席する場合に用いられる「委任状」があります。
しかし、ここでいう「書面による決議」とは、「書面または電磁的方法による合意」で、集会(総会)において決議すべきものとされた事項について、区分所有者全員の合意があったときは、集会の決議があったものとみなす(法45条2項)というものです。
この方法は、マンション分譲時の原始規約の設定手続に利用されています。
では、「書面による決議」を行うことで定期総会を開催したことになるのでしょうか。「書面(電磁的方法)による決議」および「書面(電磁的方法)による合意」の両方とも集会を開催しないで決議を代替する効果はありますが、法34条2項で規定する「管理者(理事長)は、少なくとも毎年1回の集会(総会)を招集しなければならない」という義務が免除されたことになるわけではありませんので、理事長は別途総会を招集しなくてはなりません。
■総会の出席資格
標準管理規約45条では「組合員のほか、理事長が必要と認めた者は、総会に出席することができる」と規定しています。売買や相続などで所有権を取得した時点で組合員となりますので、売却などで所有権を失えば、その時点で組合員としての資格もなくなります(標準管理規約30条)。マンションの所有者である限り、管理組合を脱退することは認められません。
総会の当日に組合員の資格があることが総会に出席できる資格ですので、総会の案内が配布された後に区分所有者(組合員)変更された場合でも新しい組合員の方に出席資格があります。
総会の出席資格について少し補足しますと、理事長が必要と認めた者は、総会に出席することができるとなっています。理事長が必要と認めた者とは一般的にどのような人なのでしょうか。
標準管理規約45条の関係コメントで「マンション管理業者、管理員、マンション管理士等」と例示しています。また、同条2項では、「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることがでこの場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない」と規定しています。
したがって賃借人も一定の要件を満たせば総会に出席することが認められています。
■役員候補者の選任方法
「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」(標準管理規約35条2項)と規定されていますが、役員候補者の選任方法は具体的に示されていません。
それでは、一般的なマンションではどのような方法で役員を選任しているのでしょうか。役員の選任について次のような方法が考えられます。
・立候補制:役員候補者を公募して、応募者から役員候補者を選任する方法
・輪番制:各階ごとなどあるグループごとに、順番を決めて持ち回りで役員候補者を選任する方法
・推薦制:現役員や組合員が役員に適している組合員を、役員候補者として推薦する方法
・抽選制:役員未経験者を対象に「公開抽選会」での抽選により役員候補者を選任する方法
ちなみに、平成30年度マンション総合調査では、全体では、「順番」が75.2%、「立候補」が32.9%となっています。
総戸数規模別では、「501戸以上」で、「立候補」が83.8%となっています。