(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

7月分機械受注(除船電民需)は前月比+0.9%と全体の季節調整値は2ヵ月ぶり増加

 

製造業・前月比+6.7%の4ヵ月連続増加、非製造業・前月比▲9.5%と2ヵ月ぶり減少

 

3ヵ月移動平均3ヵ月連続の増加等で、基調判断「持ち直しの動きがみられる」に据え置き

 

7~9月期の見通し前期比+11.0%達成には、8月・9月の前月比が+8.3%ずつ必要

 

 

●7月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は+0.9%と2ヵ月ぶりの増加になった。また、3ヵ月移動平均は前月比+2.3%で3ヵ月連続の増加になった。機械受注(除船電民需)の前年同月比は+11.1%で4ヵ月連続の増加になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回6月分では、卸売業・小売業の運搬機械1件があったが、今回7月分では該当なしだった。

 

●7月分製造業の前月比は+6.7%と4ヵ月連続の増加だ。7月分の製造業では17業種中、8業種で増加し、減少は9業種だった。電子計算機等、電子応用装置といった電気機械や、内燃機関などの造船業などが増加に寄与した。

 

●7月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲9.5%と2ヵ月ぶりの減少になった。6月分では火水力原動機1件の大型案件があった電力業は7月分ではなかった。電力業の前月比は▲12.7%で2ヵ月ぶりの減少となった。7月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比▲8.0%と2ヵ月ぶりの減少になった。非製造業12業種中、2業種が増加で10業種が減少となった。建設機械などの建設業や、運搬機械、電子計算機等といった卸売業・小売業などが減少に寄与した。

 

●大型案件は、前回6月分は全体で3件であった。内訳は民需が、卸売業・小売業1件(運搬機械)、電力業1件(火水力原動機)、他に外需が1件(鉄道車両)であった。今回7月分は全体で2件にとどまった。内訳をみると、2件とも官公需で、防衛省1件(航空機)、地方公務1件(その他産業機械)である。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は7月分前月比▲0.6%と5ヵ月ぶりの減少となった。一方、前年同月比は+22.3%と4ヵ月連続の増加になった。

 

●外需は、7月分の前月比が+24.1%と2ヵ月ぶりの増加になったが、前年同月比は+122.5%で4ヵ月連続の増加になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、19年10月分から20年3月分まで半年にわたり「機械受注は、足踏みがみられる」という判断であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく出た4月分では「機械受注は、足元は弱含んでいる」という判断に下方修正され、5月分では判断据え置きになった。6月分では「機械受注は、減少している」という判断にさらに下方修正され、7月分では判断据え置きになった。8月分で「機械受注は、下げ止まりつつある」に上方修正され、9月分でも据え置きになった。10月分で「下げ止まっている」に上方修正となったあと、11月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正、12月分では「持ち直している」に3ヵ月連続で上方修正となった。

 

●21年1月分では「持ち直している」で内閣府の基調判断は据え置きであった。2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、3月分・4月分でも同じ判断だった。5月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、前回6月分に続き今回7月分でも据え置きとなった。機械受注(除船電民需)の前月比が+0.9%の増加、そして3ヵ月移動平均が3ヵ月連続増加しているが、一方で非製造業が前月比マイナスに転じたことなど、総合的に判断しているようだ。

 

●機械受注(除船電民需)の7~9月期は前期比+11.0%の見通しである。見通しを達成するためには、8月・9月の前月比が+8.3%ずつ増加することが必要だ。設備投資の基調は底堅いとみられるものの、緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大による企業活動の停滞を懸念する企業も多いと見られ、8月・9月の機械受注の前月比がそこまで高い伸び率になる可能性は小さそうだ。

 

●機械受注(除船電民需)の7~9月期・前期比実績は09年(平成21年)から昨年までの12年間でみると、上振れ10回、下振れ2回であり、上振れしやすい傾向がある四半期であるが、今年は下振れる可能性が大きそうだ。但し、8月・9月の前月比が各々0.0%でも7~9月期の前期比は+2.3%の増加になる。

 

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIは、20年1月の現状判断DIが52.8(回答数9人)と景気判断の分岐点50を上回り底堅さが感じ取れる感じだったが、20年4月に新型コロナウイルスの影響で現状判断DIが10.0(同5人)へと急落した。4月を底に多少の上下はあったものの11月は50.0(同13人)まで持ち直した。しかし、その後は新型コロナウイルス感染状況に翻弄されるように、21年2月に37.5(同14人)と低下した。その後、21年3月47.5(同10人)、4月44.4(同9人)、5月45.0(同5人)、6月50.0(同7人)、7月50.0(同7人)、8月45.8(同6人)と推移している。8月では「緊急事態宣言が発出されたが、各企業も大きな動きはなく営業活動を行い、設備投資に関しても問題なく計画されている。」というコメントをする景気ウォッチャー(九州・その他サービス業[物品リース]〔職員〕)がいた。

 

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは20年4月には18.8(同8人)と弱含んだ。新型コロナウイルスの影響によるところが大きい。4月をボトムに持ち直し、一進一退状態もあったが、21年1月64.3(同7人)まで戻した。その後、2月44.4(同9人)、3月55.6(同9人)、4月46.9(同8人)、5月37.5(同6人)、6月43.8(同4人)、7月43.8(同8人)、8月28.7(同7人)と推移してきた。8月では「緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大によって市民生活と企業活動が共に長期的に停滞し、レジャー・外食を始めとする個人消費が大きく低下するとともに、企業の設備投資も縮小・先送り等の見直しが行われると考える。(東海・百貨店〔経理担当〕)」というコメントがあった。

 

●日本工作機械工業会によると、8月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+100.4%と、3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%、7月分+82.9%に続き、6ヵ月連続の増加になった。新型コロナウイルスの影響が出ていた前年の反動の影響が大きいが、加えて生産設備需要が増加しつつある面もあるようだ。機械受注統計での民需からの工作機械受注も同様の動きになっている。7月分の前年同月比+84.8%と、3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%、6月分+77.2%とに続き5ヵ月連続の増加である。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年7月分「機械受注」のデータ』を参照)。

 

(2021年9月15日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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