(※写真はイメージです/PIXTA)

妻に先立たれた後、ある女性と20年以上、夫婦同然の生活をしていた丙野春夫さん。財産を、前妻との間の2人の子供へ相続、内縁の妻へ遺贈する遺言書を作成しましたが、そこには重大な漏れがありました。遺言書を作成する際の注意点を、行政書士の山田和美氏が解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

内縁の妻が財産を受け取れるまでの「長い道のり」

少し難しい話になりますが、相続人ではない者が財産をもらう「遺贈」には、財産を「もらう側」の手続きのみでは足りません。遺贈を実現するには、もらう人のほか、財産を「渡す人」の協力が必要です

 

持ち主である春夫さんはこの世にいませんので、当然、手続きへの協力はできません。では、誰がこの「渡す人」になるのかと言えば、これは原則として相続人。この例では2人の娘たちです。

 

一方、相続人に対して「相続させる」と書いた部分については原則、もらう人だけで手続きができます。つまり、金融機関によって多少対応は異なりますが、本例では、娘たちはこの遺言書を持って金融機関に出向けば自分の取り分は引き出せる、ということになります。

 

では、2人の娘に協力してもらえる見込みのない内縁の妻はどうすればよいのでしょうか。

 

実は、遺言書を実現する責任者である「遺言執行者」を選任することで、2人の娘ではなく、この遺言執行者に手続きをしてもらうことが可能です。この場合、内縁の妻は家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を決めてもらう手続きを行ないます。

 

ただ、この手続きも検認同様、慣れていないうえに外出が困難では、完了までに多大な労力を要するでしょう。こうしていくつかの段階を経たのち、選任された遺言執行者によって、ようやく春夫さんの残してくれたお金を内縁の妻は手にすることができるのです。

 

このような一連の手続きは、健康で、かつ時間があったとしても、慣れていないと大変です。何から手をつけてよいのかわからず途方に暮れ、場合によっては手続きを途中であきらめてしまうかもしれません。

 

では、遺言者である春夫さんはどうすればよかったのでしょうか。

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

山田 和美

日本実業出版社

昨今の終活ブーム、エンディングノートブームの影響で、 ・そもそも法律要件を満たしていないので効力がない ・遺族がもめやすい検討事項がまったく解決されていない ・相続税は抑制されたようだけど、これでは家族の溝を深…

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