圧倒的な品揃えを誇るフライパン。

「これが欲しかった!」と思える料理道具は一切値切らずに、喜んで購入してくれると気づいた。ならば、〝超〞がつくほどマニアックな品揃えを持つ専門店をつくればいい。これから進むべき道が見えてきたが…。本連載は老舗料理道具専門店「飯田屋」6代目の飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

料理道具には人を笑顔にさせる魅力が潜む

さっそく、飯田屋の取扱商品を二つの基準で分類してみると、プロの料理人と一般のご家庭の方の双方ともに買う商品カテゴリーがありました。それが「料理道具」です。プロの料理人に高品質で耐久性のある料理道具が売れるのは当然ですが、一般のご家庭の方もプロの料理人用につくられた料理道具を買いに来られていたのです。

 

「両方のお客様に来てもらえるものを商品構成の中心にすれば、どちらも喜んでくれて集客は2倍になる!」

 

無秩序だった品揃えを、料理道具に絞っていこうと決意しました。

 

料理とは、ただ空腹を満たすだけのものではなく、大切な誰かのためにつくるものです。誰かを想いながらつくるひとときも幸せな時間であり、食べたほうも幸せを感じられます。

 

軟やわらかい食感の大根おろしを探し当てると、割烹着の料理人は1円も値切らず買ってくれたという。
軟やわらかい食感の大根おろしを探し当てると、割烹着の料理人は1円も値切らず買ってくれたという。

 

そんな幸せをつくりだせる料理に欠かせない料理道具には、多くの人を惹きつけ、人を笑顔にさせる魅力が潜んでいるのです。

 

これまで、競合店より安く見積もって取引を勝ち得たこともありました。

 

しかし、それで取引先が笑顔を見せてくれたことはありません。数字で始まった商売は、どこまでも行っても数字でしかなく、笑顔は生まれませんでした。

 

一方、たった一つの道具を一切の値引きもなく購入し、見たことのないような満面の笑みを見せてくれるお客様もいます。はたしてこれから先、どちらのお客様と長いお付き合いをしたいのか……。

 

「たった一人のお客様でいいから、たった一つの最高の商品をご提案することで、満面の笑みを見せてもらいたい。お客様に自信を持って提案できる料理道具屋がやりたい!」

 

今まで曇天のようだった僕の心に、一筋の光がさした瞬間でした。


■なんでもない強みを掛け合わせたら…

 

「『これが欲しかった!』と心から満足いただける商品だけを集めたら、値切られない店になれるし、自分自身がやりたかった笑顔あふれる商売ができるんじゃないか」

 

そう考えると、僕たちには二つの強みがありました。

 

一つは、たった1個から商品を仕入れられることです。

 

もう一つは、発注から納品までの時間が短いことです。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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