圧倒的な品揃えを誇るフライパン。

「これが欲しかった!」と思える料理道具は一切値切らずに、喜んで購入してくれると気づいた。ならば、〝超〞がつくほどマニアックな品揃えを持つ専門店をつくればいい。これから進むべき道が見えてきたが…。本連載は老舗料理道具専門店「飯田屋」6代目の飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

心から満足できたお客様は値切らない!

■そもそも飯田屋のお客様って、誰?

 

「強みの一つもない飯田屋にわざわざ来てくださるのは、どんなお客様だったのか?」

 

僕らは自店のお客様を思い返してみました。

 

当時、電子レンジで加熱調理が簡単にできるシリコン製スチーマーが人気を呼んでいました。5000円以上もする商品ですが、試しに仕入れてみると、すぐに売れていきます。

 

お客様は一般のご家庭の方でした。飯田屋のお客様はプロの料理人ばかりだと思っていま

したが、実は一般のお客様も多くいたのです。

 

これをきっかけにシリコン製のおたまやヘラなども仕入れてみると、またすぐに売れていきます。しかも、一般のお客様は気に入れば、値切ることなくご購入くださいます。

 

値切り交渉を必要としない商売を初めて知った出来事でした。

 

「一般のご家庭の方向けに、シリコン製商品にジャンルを絞った棚をつくってみたら?」

 

小さな成功体験を得た僕に、加藤が背中を押してくれました。それを機に、少しずつ一般のお客様が増えはじめていくのです。

 

このときハッと、気づいたことがありました。高額なおろし金を買ってくださったプロの料理人と、シリコン製スチーマーを買ってくださった一般のお客様の共通点です。

 

「これが欲しかった!」と思えるものは一切値切らずに、喜んでご購入くださいます。

 

欲しかった道具に出合い、心から満足できたお客様は値切らないのです。

 

一方、欲しかった道具に出合えず、「これでいいや……」と心からの満足を得られなかったとき、その不満足の隙間を埋めるために値切るのかもしれません。

 

「それなら、お客様が欲しいものがいつでも揃っている店になれたらどうだろう?」

 

飯田屋の取扱商品を見渡してみると、二つのタイプに分けられることに気づきました。

 

「プロの料理人だけが買う商品」と「プロの料理人も一般のご家庭の方も買う商品」です。

 

たとえば、コックコートはプロの料理人しか買いませんが、フライパンはどちらのお客様も買います。メニュー帳はプロの料理人しか買いませんが、包丁はどちらのお客様も買っていきます。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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