相続人と音信不通でも、請求されるリスクがあるワケ
一方、遺留分権利を持つ相続人と長年音信不通状態にあり、遺言者が亡くなったこと自体を知る可能性さえ低いような場合には、遺留分請求をされるリスクは高くないかもしれません。この場合には、遺留分を侵害した遺言書を作成することも検討の余地があります。
ただし、遺留分侵害額請求をできる期限が意外と長い点、音信不通の相続人へ通知される場合がある点にも注意してください。
遺留分侵害額請求の期限は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」からは1年ですが、相続が起きたこと等を知らないまま時が過ぎた場合には、相続開始から10年間は請求できます。
たとえば、遺言者が亡くなったことを知らないまま月日が流れても、仮に相続開始後8年が経った日に相続が起きたこと等を知ったのであれば、それから1年間は遺留分侵害額請求ができてしまう、ということです。
さらに、遺言書が自筆証書であった場合、検認の通知は、遺言書のなかに名前が出てくるかどうかにかかわらず、相続人全員に送られます。
また、遺言執行者が選任された場合、執行者はその義務として、財産目録などを作成し、相続人全員に交付しなければなりません。
単に音信が途絶えているだけで、住民票の住所地には住んでいるのであれば、通常、この過程で死亡の事実や遺言書の存在を知ることになります。
そのため、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する場合でも、「絶対に請求されないだろう」等と安易に考えることはお勧めできません。
遺留分を侵害する遺言書を作成する場合は必ず、万が一減殺請求された場合に備え、遺留分の返還に備えた金融資産を準備しておいてください。返還に備えたお金の準備には、生命保険を活用することも1つの方法です。
遺留分を侵害した内容の遺言書は、後のトラブルのもとになります。遺留分という制度があることを知ったうえで、慎重に対応を検討するようにしましょう。
山田 和美
なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター(愛知県東海市)所長
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】