(※写真はイメージです/PIXTA)

長年顔すら合わせていない家族ではなく、知人に財産を渡すと、遺言書を書いた丙野さん。しかし「遺留分」を考慮しなければトラブルに発展する可能性が…。行政書士の山田和美氏が解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続人と音信不通でも、請求されるリスクがあるワケ

一方、遺留分権利を持つ相続人と長年音信不通状態にあり、遺言者が亡くなったこと自体を知る可能性さえ低いような場合には、遺留分請求をされるリスクは高くないかもしれません。この場合には、遺留分を侵害した遺言書を作成することも検討の余地があります。

 

ただし、遺留分侵害額請求をできる期限が意外と長い点、音信不通の相続人へ通知される場合がある点にも注意してください。

 

遺留分侵害額請求の期限は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」からは1年ですが、相続が起きたこと等を知らないまま時が過ぎた場合には、相続開始から10年間は請求できます。

 

たとえば、遺言者が亡くなったことを知らないまま月日が流れても、仮に相続開始後8年が経った日に相続が起きたこと等を知ったのであれば、それから1年間は遺留分侵害額請求ができてしまう、ということです。

 

さらに、遺言書が自筆証書であった場合、検認の通知は、遺言書のなかに名前が出てくるかどうかにかかわらず、相続人全員に送られます。

 

また、遺言執行者が選任された場合、執行者はその義務として、財産目録などを作成し、相続人全員に交付しなければなりません。

 

単に音信が途絶えているだけで、住民票の住所地には住んでいるのであれば、通常、この過程で死亡の事実や遺言書の存在を知ることになります。

 

そのため、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する場合でも、「絶対に請求されないだろう」等と安易に考えることはお勧めできません。

 

遺留分を侵害する遺言書を作成する場合は必ず、万が一減殺請求された場合に備え、遺留分の返還に備えた金融資産を準備しておいてください。返還に備えたお金の準備には、生命保険を活用することも1つの方法です。

 

遺留分を侵害した内容の遺言書は、後のトラブルのもとになります。遺留分という制度があることを知ったうえで、慎重に対応を検討するようにしましょう。

 

 

山田 和美

なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター(愛知県東海市)所長

 

 

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

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