(※写真はイメージです/PIXTA)

英国国立ウェールズ大学経営大学院にて「医療経営学修士号」を取得した臨床医である角田圭雄氏の著書『MBA的医療経営』より一部を抜粋・再編集し、医療経営についての見解を紹介します。

より高度なサービスを求め…医療を消費化する患者

第五に、患者が医療消費者として、高度かつ多様な医療サービスを求めるようになってきたことが挙げられます。

 

近年、医療者は、医療のレベルや知識の向上に費やす時間よりも、患者への説明、同意書の作成に膨大な時間を費やし、さらに接遇面でも高級ホテルやレストランなみの対応が求められるようになっています。

 

医療もサービス業であり、顧客満足度は重要ですが、医療は他のサービス業とは異なり公共性が強く、しかも病院側が価格を決定することができません(自費診療は別ですが)。

 

通常のサービス業のようにお金さえ出せば高度なサービスが提供されるという状況にありません。しかし、このことがお金を出さなくても高度なサービスを要求していいという誤った状況を作り出しています。

 

私は飛行機に乗るときはほとんどエコノミークラスですが、少々客室乗務員のサービスが悪くてもクレームを言うことはありません。なぜなら、サービスに文句があるなら、お金を出してビジネスクラスやファーストクラスで乗りなさいという暗黙のルールが見えるからです。

 

同様のことは東京ディズニーランド(TDL)やユニバーサルスタジオジャパン(USJ)でもあります。アトラクションによっては何時間待ちというものも当たり前ですが、エクスプレスパスを手に入れれば、ほとんど待ち時間なしで楽しむことができます。

 

お金が払えない人は、何時間も待たされますが、私のエコノミーと同様、待ち時間が長くてもクレームを言うことができないのです。クレームがあるなら、お金を出してエクスプレスパスを買ってくださいということを示唆しているわけです。

 

医療においてはこのような仕組みがないために、外来の待ち時間が長くなるとクレームが出ますし、若い医師が担当になると主治医を代えて欲しい、部屋は窓際でなければ嫌だといった過剰な要求も生まれてきます。

 

医療の本質的な内容に差別や価格差を生むことには賛成できませんが、周辺のサービスに関しては患者の要求にこたえるシステムを作ったほうが、このような過剰な要求に柔軟に対応できます。

 

第六に、日本の医療制度の変化に機敏に対応するために、財務分析等を含めた経営に関する知識が求められることが挙げられます。さらに、製薬企業などの営利企業との関わり方を考える上で、経営学の基礎的な理論を学ぶことは企業と共通の用語で理解できるといった点でも有意義です。

 

私はかならず関連する製薬企業のホームページで決算報告会を動画で見ていますが、貸借対照表(バランスシート:BS)、損益計算書(プロフィットロス:P/L)、自己資本利益率(Return On Equity:ROE)、配当性向などの経営用語の意味を理解できます。

 

もちろん開発中の薬剤パイプラインや企業の経営戦略を学ぶことで、新薬の情報や今後の臨床研究の方向性を見出すことも可能です。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧