再雇用で年収“ほぼ半減”…定年後の暮らしに悩むAさん
サラリーマンのAさんは、今年の9月で60歳を迎えます。40年勤めた会社の定年を目前に控え、老後の暮らしについて悩んでいる様子。現在の年収は約700万円ですが、定年後の再雇用では約400万円に下がる予定です。
「300万円も減るのか。これはまずいな……」老後のお金について悩んでいたAさんは、「年金繰上げ受給」の存在を知りました。繰上げ受給を選択すると、年金は65歳からではなく最速60歳から受け取ることができるようです。
「年金受給額は減らされるけれど、給与と年金を両方受け取ることができれば、いまの生活レベルをあまり下げずに済むかもしれない」
こう考えたAさんは、FPである筆者のもとに、自身の老後プランについて考えて欲しいと相談に訪れました。
なお、Aさんは現在、妻のBさんと2人で暮らしています。Bさんは、結婚前は会社員でしたが、結婚後は長いあいだ専業主婦として家庭を支えています。
Aさんが「繰下げ受給」ではなく「繰上げ受給」を望むワケ
Aさんは「知り合いに、受け取るお金が増えるからと年金受給を70歳まで繰下げたにもかかわらず、翌年に71歳で亡くなってしまった人がいたんです。僕もいつまで生きていられるかわかりませんし、繰下げ受給はせず、年金は繰り上げて受け取るつもりです」といいます。
定年後も65歳までは働く予定のAさん。わざわざ年金を繰上げる必要があるのでしょうか。疑問に思った筆者は、まずは「繰上げ受給」について下記のように説明を行いました。
「年金の繰上げ受給」とは?
「年金の繰上げ受給」とは、本来の年金支給開始年齢より前倒しで受給を始める代わりに、年金が減額される制度です。
繰上げ受給を選択すれば、60歳~65歳の希望したタイミングで年金が受給できるようになります。1ヵ月繰り上げるごとに0.4%減額されるため、仮に60歳0ヵ月で受給開始(5年=60ヵ月繰上げ)すると、24%(0.4%×60ヵ月)減額となります。
Aさんは「繰上げ受給で年金が減額されるのは知っているけれど、年金は受け取れるときから受け取ったほうがいいだろう」と繰上げ受給を検討しています。
たしかに、通常より早く受給すれば65歳より前に年金収入を確保できるほか、もしも早くに亡くなった場合、一生涯の受給累計額で見て、通常より多くの年金を受け取れることになります。
しかし、繰上げ受給には減額以外にもさまざまなデメリットがあるのです。