(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の日本では、老後の資金不安を軽減させたいという考えから、年金の受給開始時期を後ろ倒しにして受給額を増やす「繰下げ受給」が注目されがちです。しかし、なかには受給額を減らしてでも「繰上げ受給」を選択する人も。いったいどちらを選択すべきなのか、老後の暮らしに悩むAさんの事例をとおして、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の井内義典CFPが解説します。

再雇用で年収“ほぼ半減”…定年後の暮らしに悩むAさん

サラリーマンのAさんは、今年の9月で60歳を迎えます。40年勤めた会社の定年を目前に控え、老後の暮らしについて悩んでいる様子。現在の年収は約700万円ですが、定年後の再雇用では約400万円に下がる予定です。

 

「300万円も減るのか。これはまずいな……」老後のお金について悩んでいたAさんは、「年金繰上げ受給」の存在を知りました。繰上げ受給を選択すると、年金は65歳からではなく最速60歳から受け取ることができるようです。

 

「年金受給額は減らされるけれど、給与と年金を両方受け取ることができれば、いまの生活レベルをあまり下げずに済むかもしれない」

 

こう考えたAさんは、FPである筆者のもとに、自身の老後プランについて考えて欲しいと相談に訪れました。

 

なお、Aさんは現在、妻のBさんと2人で暮らしています。Bさんは、結婚前は会社員でしたが、結婚後は長いあいだ専業主婦として家庭を支えています。

 

Aさんが「繰下げ受給」ではなく「繰上げ受給」を望むワケ

Aさんは「知り合いに、受け取るお金が増えるからと年金受給を70歳まで繰下げたにもかかわらず、翌年に71歳で亡くなってしまった人がいたんです。僕もいつまで生きていられるかわかりませんし、繰下げ受給はせず、年金は繰り上げて受け取るつもりです」といいます。

 

定年後も65歳までは働く予定のAさん。わざわざ年金を繰上げる必要があるのでしょうか。疑問に思った筆者は、まずは「繰上げ受給」について下記のように説明を行いました。

「年金の繰上げ受給」とは?

「年金の繰上げ受給」とは、本来の年金支給開始年齢より前倒しで受給を始める代わりに、年金が減額される制度です。

 

繰上げ受給を選択すれば、60歳~65歳の希望したタイミングで年金が受給できるようになります。1ヵ月繰り上げるごとに0.4%減額されるため、仮に60歳0ヵ月で受給開始(5年=60ヵ月繰上げ)すると、24%(0.4%×60ヵ月)減額となります。

 

Aさんは「繰上げ受給で年金が減額されるのは知っているけれど、年金は受け取れるときから受け取ったほうがいいだろう」と繰上げ受給を検討しています。

 

たしかに、通常より早く受給すれば65歳より前に年金収入を確保できるほか、もしも早くに亡くなった場合、一生涯の受給累計額で見て、通常より多くの年金を受け取れることになります。

 

しかし、繰上げ受給には減額以外にもさまざまなデメリットがあるのです。

 

 

次ページ筆者が警告する「年金繰上げ受給」のデメリット

※個人情報保護のため、登場人物の情報は一部変更しています。

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