※画像はイメージです/PIXTA

東京オリンピック・パラリンピックが終了しましたが、メイン会場となった新国立競技場は、この先の使い道が定かでなく、また、毎年高額な維持管理費が必要との報道もあります。もしもそれが真実なら、無理して活用の道を探るより、取り壊してしまうほうがずっと効率的だとも考えられます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

莫大な建築費をかけたから、使わないともったいない?

オリンピック、パラリンピックが終了しました。さて、そのために作られた新国立競技場は、今後どうなるのでしょうか。一部の報道では、使い道が決まっておらず、毎年の維持費だけがかかる可能性も小さくないといわれています。

 

筆者はその点ついてまったく詳しくありませんが、仮にその報道が正しいとした場合、新国立をどうすべきか、ということを考えてみたいと思います。結論から先にいえば、取り壊すべき、ということになりそうです。

 

それは、サンクコストという考え方から来ています。払ってしまった金のことは忘れて、未来志向で一番幸せになれる選択肢を検討しよう、という考え方です。

 

ちなみに、サンクコストの「サンク」は、サンキュー(Thank you)などで使われる、感謝する、という意味の英単語「thank」からではなく、沈んでしまった、という意味の英単語、「sunk」から来ている名前です。

 

筆者が心配しているのは、「莫大な費用をかけて建設したのに、無観客で数週間利用しただけで取り壊すなんてもったいない」という意見が通って、今後新たに活用方法が見つかるという可能性に賭けて維持費を払い続けることになる点です。

 

それこそ、サンクコスト論が戒める典型的な例だからです。

料理がまずい食べ放題の店で、元を取りたいと考える?

買った本を読みはじめたら、期待外れでつまらなかったとしましょう。それでも、「本を買ったときに払った代金がもったいないから、最後まで読もう。もしかしたら面白いかもしれない」と考える人は多いようです。

 

つまらない本を読む代わりに散歩に行けば、本の代金は失います。それを惜しんで最後まで読むと、結果として、本の代金と読んだ時間をともに失うことになるわけです。

 

もちろん、本の最初がつまらなくても最後が面白い、という可能性は皆無ではありませんが、そうした小さな可能性に賭けて本を読み進めるというのは、お勧めしにくい選択肢ですね(笑)。

 

払ってしまった代金は、本を読まずに捨てても、本を最後まで読んでも戻ってきません。そうであれば、代金を払った瞬間に代金のことは忘れ、未来志向で考えましょう。「この本を読むのと散歩に行くのと、どちらが私を幸せにするだろうか」と。

 

これは本に限らないのです。食べ放題の店に入ってから、料理が口に合わないことに気づいた場合、元を取ろうと頑張って食べる人もいるようですが、口にあわない料理を無理して食べたところで、払った代金が戻ってくるわけではありません。

 

それなら速やかに店を出て、自宅でお茶漬けでも食べたほうが、はるかに幸せになれるかもしれませんよ。少なくとも、「満腹になっても元をとるために食べ続ける」のだけはやめましょう。食べすぎて体調を崩したり、体型が崩れたりするリスクがありますから(笑)。

 

また、買った本の代金を惜しんではいけない、というサンクコストの考え方はわかったけれども、それでもなお、つまらない本を最後まで読まずにいられない人もいるでしょう。

 

そういう人は「こんなつまらない本を買った自分は愚かだった」と思うのが嫌で、最後まで読めば面白いかもしれないという、淡い期待にすがろうとしているのです。

 

これは、自分自身に見栄を張っているわけですね。他人に愚かだと思われたくなくて見栄を張るなら理解可能ですが、「自分で自分を愚かだと思いたくないから」という理由で、つまらない本を無理して読むというのは、到底お勧めできません。

 

つまらない本を買ってしまっただけでなく、それを最後まで読んでしまうという自分の愚かさに、改めて気づいてしまうだけですから(笑)。

 

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