公的年金は、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」
公的年金の厚生年金部分を積立方式に変更しよう、という論者がいますが、一長一短だろうと筆者は考えています。
公的年金の制度は2階立てです。1階部分は全員が加入する国民年金(老齢基礎年金)、2階部分はサラリーマン(サラリーウーマンや公務員等を含む、以下同様)が加入する厚生年金です。本稿は、1階部分には言及せず、2階部分についてのみ論じることとします。
日本の厚生年金制度は、自分で自分の年金を積み立てる「積立方式」ではなく、現役世代のサラリーマンが収入の一定割合を年金保険料として納め、それが高齢者の年金の原資となっているわけです。こうした現役世代が高齢者を支える方式を「賦課方式」と呼びます。
筆者はまもなく年金を受給する年齢ですが、筆者の父の世代は、自分の親の世代の老後を各自で支えました。その後、公的年金の制度が整備されたため、筆者の父の世代は年金保険料を払わずに年金を受け取ったわけですが、それは世代間不公平ではないわけですね。父の世代もしっかり上の世代の面倒を見たわけですから。
年金制度ができる前は、子のいない高齢者は困ったでしょう。ひとりっ子は親を支えるのが大変だったでしょうが、大勢きょうだいがいれば、負担は軽かったでしょう。また、子の数が同じでも、親が長生きをするか否かで子の負担に大きな差が出たはずです。そうした問題をなくすため、現役世代が皆で親の世代を共同で支えるようにしたのがいまの制度ですね。
「子のいない高齢者は、他人の子が払った保険料のなかから年金が受け取れる」ことを年金制度による不公平と考える人もいるでしょうが、本稿ではそうした人が路頭に迷わなくなったのは事態の改善だと考えることにしましょう。
賦課方式は少子高齢化に弱いから「積立方式」に?
現役世代が高齢者を支えるという賦課方式の制度は、少子高齢化に弱いという問題があります。現役世代の人数が減り、高齢者の人数が増えると、少ない年金保険料を大勢の高齢者で分け合うことになり、保険料の値上げで現役世代が苦しむか年金支給額の減額で高齢者が苦しむか、両方実施して皆が苦しむか、という選択になるわけですから。
もっとも、これは年金制度の問題とはいえないでしょう。少子高齢化になるまで年金制度ができていなかったとすれば、各家庭で少数の子どもが長生きする親の老後の面倒をずっとみる必要があったわけで、年金制度があってもなくても、少子高齢化は現役世代の負担なのです。
理想をいえば、祖父の世代が自分の老後資金を自分で用意して、父の世代の世話にならなければよかったのです。そうすれば、父の世代も自分の老後資金は自分で貯めることができたわけですから。もっとも、いまごろになってそんなことをいっても始まりませんね(笑)。
この問題に対処するため、「賦課方式から積立方式に変更しよう」という論者が出てくるわけです。自分で積み立てた資金を自分の老後に使うなら、少子高齢化の影響は限定的ですから。
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