(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●米金融政策正常化が進んだ2013年末から2018年末までの、主要株価指数の動きを検証する。

●金融政策正常化の5年間、日米とも主要株価指数は2ケタ上昇、スタイル別ではグロース株優位。

●他国の株価も総じて堅調、米金融政策正常化の進行は安定した経済・金融環境の証左とみる。

米金融政策正常化が進んだ2013年末から2018年末までの、主要株価指数の動きを検証する

今回のレポートでは、米連邦準備制度理事会(FRB)が、過去に金融政策の正常化を進めた際、世界の主要株価指数はどのように動いたかを検証します。改めて前回の正常化プロセスを確認すると、まず、2014年1月に量的緩和の縮小(テーパリング)が開始され、同年10月に終了しました。次に、満期を迎えた国債などの再投資により、総資産残高が維持される期間がしばらく続きました。

 

そして、2015年12月に利上げが開始され、2018年12月まで続きました。なお、利上げ開始後、2017年10月に、総資産残高の段階的な縮小が始まりました。以上の金融政策の正常化スケジュールを踏まえ、主要株価指数の動きを検証する期間については、テーパリング開始直前の2013年12月末から、利上げが終了した2018年12月末までの5年間とします。

金融政策正常化の5年間、日米とも主要株価指数は2ケタ上昇、スタイル別ではグロース株優位

ここから、具体的に主要株価指数の騰落率をみていきます。米国では、2013年12月末から2018年12月末までの5年間において、ダウ工業平均株価指数は+40.7%、S&P500種株価指数は+35.6%、ナスダック総合株価指数は+58.9%と、大きく上昇しました(図表1)。日本でも、日経平均株価指数が+22.9%、東証株価指数(TOPIX)が+14.7%と、米国の3指数に比べ控えめな数字ではありますが、2ケタの上昇率となりました。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]日米主要株価指数の騰落率 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

つまり、米国で前回、テーパリングや利上げなどが行われても、日米の主要株価はそろって上昇したということになります。参考までに、スタイル別の騰落率をみると、米国ではS&P500グロース指数が+52.3%、S&P500バリュー指数が+18.1%となり、日本ではTOPIXグロース指数が+20.0%、TOPIXバリュー指数が+9.6%でした。金融政策の正常化が進んだ5年間では、日米ともグロース株が相対的に優位だったことが分かります。

他国の株価も総じて堅調、米金融政策正常化の進行は安定した経済・金融環境の証左とみる

その他の国の株価についても確認してみます。欧州では、ドイツ、フランスで株価が上昇した一方、英国とイタリアでは下落するなど、まちまちの動きとなりましたが、アジア諸国の株価は総じて堅調に推移しました(図表2)。新興国では、2013年12月末からの5年間で原油安が進行した影響などから、ロシアの株価は2ケタ下落しましたが、ブラジルなどの株価は2ケタ上昇しています。

 

(注)データは2013年12月末から2018年12月末。騰落率の単位は%。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]欧州などの主要株価指数の騰落率 (注)データは2013年12月末から2018年12月末。騰落率の単位は%。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

一般に、米金融政策の正常化は株式市場にとって懸念材料とされることが多く、また、米利上げは新興国株式市場の波乱要因とみなされることが多いように思われます。しかしながら、今回検証した通り、実際の株式市場に懸念や波乱はほとんどみられませんでした。もちろん、米金融政策の正常化だけが株価の材料ではありませんが、正常化の進行は、安定した経済・金融環境の証左と考えられます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『前回の米金融政策正常化局面における主要株価指数の動き』を参照)。

 

(2021年9月2日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧