民法には「兄弟姉妹全員に扶養義務あり」とあるが…
調査の結果(複数回答可)によれば、介護費用の多くは要介護者自身またはその配偶者が支払っています。著者も例にもれず、父親の介護費用は父自身の公的年金と預金からまかなっていました。
次いで多いのが、子どもの就労収入またはその配偶者からという回答です。また、10位以内に「要介護者が加入している民間の介護保険」という回答が上がったことから、介護費用に備える意識の高まりが見てとれます。
民法877条では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されています。皆さんも、おそらく「親の介護は、子どもがするのは当たり前」と思っているのではないでしょうか。たしかに、法的に見ても子どもには親の介護をする義務があるといえます。
しかし、実は介護は強制的なものではありません。民法877条では「生活を支え合う義務」とされており、「身体的な」介護の定めはありません。つまり、経済的なサポートを行うことで義務を果たすことができるといえます。
しかし、義務であるにもかかわらず経済的なサポートも怠った場合、介護放棄とみなされ、刑事罰の対象になる場合があります。具体的には、「生存に必要な保護をしなかったために、親(要介護者)が死亡、あるいは傷害を負わせる」などです。
兄弟がいるにもかかわらず、キーパーソン※2だけが身体的介護の他に金銭的援助(通いの交通費を含む)まで行っているケースを見かけます。覚えておいていただきたいのは、兄弟姉妹全員に、扶養(親が生きるために必要な経済的なサポートをする)義務があることです。
※2 介護の専門職と連携をとったり、介護サービスや医療処置に関する判断を行う役割を担う人
しかしながら、自分の生活に余裕がない、働くことができないなど、自身や家族との生活に余裕がない場合はこのかぎりではありません。それぞれが抱える事情を考えて、金銭的援助の負担割合を話し合いましょう。もしトラブルになる可能性があるなら、弁護士などの第三者を入れることも大切です。
できることなら、親が倒れてからではなく、親が元気なうちにキーパーソンを誰にするかを話し合い、そして早くから介護にかかるお金の準備をしておくことをおすすめします。