(※写真はイメージです/PIXTA)

今日のヘッドライン21年8月3日号『中国規制強化の整理』で中国の規制強化を取り上げました。この時点では、教育関連など予想もしなかったセクターに規制がかけられたことなど、中国当局の意図が読めない不安から市場に動揺が見られました。その後中国株式市場は一旦回復するも、国務院が今後5年間、広範な経済主体に規制強化をする方針を示したことで再び上値が重くなっています。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

中国規制強化:7月に頻発した規制強化は、長期戦となる可能性が示唆された

中国共産党中央委員会と国務院は2021年8月11日に法治国家建設を進める為の「法治政府建設実施要綱(21~25年)」を発表しました(図表1参照)。経済の広範な分野への規制を今後5年間継続する方針が示されました。

 

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の最近の主な規制強化 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

中国では7月に、教育関連にまで規制強化が発表されるなど、政治の介入が株式市場の下落要因となりました(図表2参照)。国務院の発表により、規制強化は長期戦になるとの観測が高まりました。

 

日次、期間:2020年8月20日~2021年8月20日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]上海総合指数と、ハンセン株価指数の推移 日次、期間:2020年8月20日~2021年8月20日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:規制強化、先富論、共同富裕、人口問題

今日のヘッドライン21年8月3日号『中国規制強化の整理』で中国の規制強化を取り上げました。この時点では、教育関連など予想もしなかったセクターに規制がかけられたことなど、中国当局の意図が読めない不安から市場に動揺が見られました。その後中国株式市場は一旦回復するも、国務院が今後5年間、広範な経済主体に規制強化をする方針を示したことで再び上値が重くなっています。

 

中国国務院が11日に発表した声明は、規制強化は一時的ではなく、腰を据えた方針であることが明確となりました。今回の指針では、経済の広範な分野を規制するとして、デジタル経済からネット金融、ビッグデータなど様々な分野で法的枠組みの点検に取り組む模様です。

 

もっとも、法治政府建設実施要綱は同様の要綱の15年~20年版もあります。形式的には、今回の要綱はそれを引き継いだとも見られます。なお、要綱は具体的な規制内容が示されているわけではなく、今後5年間でどのセクターの規制が強化されるか(少なくとも筆者には)予測できません。

 

あくまで憶測ながら、要綱の主旨は12年11月に閉幕した中国共産党第18回全国代表大会で総書記に就任した習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の政策の一部を反映した方針と思われます。鄧小平氏が提起した「先富論(豊かになれる条件を持つ地域や人から豊かになればいいという考え方)」に対し、習近平が就任以来掲げるのは「共同富裕(社会的平等を重視して格差解消する姿勢)」だからです。鄧小平氏の改革・開放政策は経済成長という果実をもたらした一方で、中国社会に汚職や経済格差など社会的歪みが生み出された面も見られます。習近平政権は就任当初から腐敗や汚職撲滅を進めてきました。もっとも、外野からみると、浄化なのか政治的な権力闘争なのか区別はつきにくい面も見られますが。

 

何故、このタイミングで規制強化となったのか? 来年の共産党大会で習近平体制の3期目が実現する公算が高まっています。強力な権力基盤が整うならば、国有企業など今まで踏み込めなかった分野への対応が想定されます。

 

次に、中国は深刻な人口問題に直面しています。出生率は最近のデータで1.3と低く将来の人口減が懸念されます。その人口減の背景として教育や住居費用の高騰を指摘する声があります。不動産や教育分野へ介入した背景は人口問題である程度説明されると思われます。

 

規制は暮らしの改善のために行っているのなら、締め付け過ぎの回避や、電気自動車など有望な産業を伸ばすようにも思われますが、当局の説明が不十分なことが気がかりです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国規制強化の背景』を参照)。

 

(2021年8月23日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録