在宅勤務は先進国、ホワイトカラー職に集中
■世界的に拡大するリモートワークへの移行
2020年5月21日、フェイスブックは数万人に及ぶ従業員の在宅勤務を認めただけでなく、世界のどこでも好きな場所を「自宅」に設定できると発表した。マーク・ザッカーバーグはテクノロジー系ニュースサイトの『ザ・ヴァージ』に次のように語っている。
<当社のような事業規模としては、リモートワークに最も前向きな企業をめざします。(中略)今後5~10年のうちに、おそらく5年よりも10年に近いと思いますが、全体の半数の従業員が恒久的にリモートワークになっている可能性があります。>
同じ日、カナダのネットショップ構築プラットフォーム大手のショッピファイとツイッターも、同様の発表をした。
ショッピファイ創業者・CEOのトビアス・リュトケは、同社従業員のほとんどが在宅勤務を選択すると見込んでいて、「そうなれば、われわれはこの大変動の波に、いわば乗客として座っているだけでいいのか。それとも、しっかりとハンドルを握り、従業員同士が大して顔も合わせることなく世界屈指のグローバル企業になる方法を自力で見つけることになるのだろうか」と述べている。
7月下旬にはグーグルが、2021年夏まで従業員の在宅を認めると発表した。その対象となるのは、全世界で実に20万人ほどに上る。このような方針を打ち出したのは、テクノロジー企業に限った話ではない。
モントリオール銀行(カナダ)やバークレイズ(イギリス)など、銀行もオフィスのない未来を視野に入れている。モンデリーズ(スナック食品メーカー)、ネイションワイド保険会社、モルガン・スタンレーも、20世紀のオフィスの価値や有用性を根本的に再考する動きを見せている。ネイションワイドの場合、オフィス5拠点を完全閉鎖し、影響を受ける従業員4000人の恒久的な在宅勤務を認める、思い切った措置を打ち出した。
バークレイズCEOのジェス・ステーリーは先ごろ、「立地戦略の考え方を長期的に調整することになる。1つのビルに7000人も詰め込むという発想は、過去のものになるだろう」と述べている。
言うまでもなく、在宅勤務の流れがあらゆる職種に同じように当てはまるわけではない。ご想像のとおり、在宅勤務の可能性は、発展途上国よりも先進国のほうがはるかに高いし、ホワイトカラー職にかなり集中する。