根本治療ではないが…負担が少ない「関節鏡手術」
変形性膝関節症が進行する過程では、膝関節の軟骨が毛羽立ったり損傷してはがれ落ちたりしてきます。そうした組織が膝関節を覆っている滑膜を刺激して炎症が起き、痛みを引き起こす原因になっています。
そこで、毛羽立ったりはがれ落ちたりした軟骨のかけらを除去し、軟骨の表面を滑らかにすることで症状の改善が見込める場合は、関節鏡手術を行うこともあります。
この手術は、膝関節の周囲に2~3ヵ所、5~7ミリ程度の穴を開けて関節鏡(内視鏡)と手術器具を挿入し、内視鏡からモニターに映し出された関節内の映像を見ながら処置を行います。変形性膝関節症で行うケースは少なく、むしろ半月板や前十字靭帯の損傷など外傷の治療に用いられています。
入院期間は3日~1週間ほどで、手術の翌日から装具をつけて歩くことができます。
この手術のメリットは、切開する部位が小さいので傷跡が残りにくく、体への負担も少ないことです。ただ、あくまでひざの痛みを緩和するのが目的で、変形性膝関節症を根本から治すための手術ではありません。
また、症状の進行に伴って効果を得られないことが多く、末期ではほとんど効果が期待できません。さらに、時間が経つと元の状態に戻ってしまい、症状が再発する可能性があることもデメリットです。
つまり早い段階に行うことで関節の変形を遅らせ、最終的に人工関節となるまでの時間を稼ぐといった意味合いが強いでしょう。
術後も重労働やスポーツができる「高位脛骨骨切り術」
関節の変形が進行してくると、体の重心がズレるために荷重のバランスが崩れて転倒しやすくなります。
そこで、膝関節に近い部分の脛骨をくさび状に切除し、そこに人工骨やプレートを入れることで関節にかかる力が均等になるように、O脚を調整する高位脛骨骨切り術を行います。特に、脛骨に歪みがある場合に有効な方法です。
患者さん自身の関節を温存できるので、重労働やスポーツの継続も可能になります。ただし、この手術はまだ変形が進んでいない状態で、骨切り術によってO脚の矯正が可能な場合に適応されます。
この手術には、オープン・ウェッジ法とクローズド・ウェッジ法の2種類があります。最近は、手術後の回復が早いオープン・ウェッジ法が多く用いられています。手術時間は1時間半程度です。
手術後は、リハビリを行いながら3週間ほどの入院が必要です。1週間後から少しずつ体重をかけ、3週間程度で全荷重をかけられるようになります。骨が完全にくっつくまでは2~3ヵ月を要します。