歩けなくなる前の最終手段「人工膝関節置換術」
変形性膝関節症がかなり進行して末期の状態になると、関節軟骨だけでなく骨まで破壊され、歩けなくなるなど日常生活に支障をきたします。また、末期ではなくても保存的治療で効果を得られず、強い痛みが続いているとQOLが著しく低下します。
このような状況を改善する目的で行う治療の最終手段とされているのが、膝関節を人工の関節に置き換える人工膝関節置換術です。
人工膝関節は、主に骨の役割を果たす金属と、軟骨の役割を果たす超高分子ポリエチレンからつくられており、本来の膝関節の動きを再現できるように設計されています。この人工関節を大腿骨や脛骨、これらの表面にある軟骨の代わりとして膝関節面に置き換える方法です。これによって痛みの原因を取り除いて関節機能を改善し、外出しやすくするなどQOLを向上させることができるようになります。
人工膝関節置換術には大きく分けると、膝関節の悪い部分だけを入れ替える「部分置換術」と、膝関節全体を人工関節に入れ換える「全置換術」の2種類があります。
●人工膝関節単顆(たんか)置換術(UKA)
損傷の激しい部分だけを人工物に置き換える手術です。関節のすり減りが内側だけなら内側だけ、外側だけなら外側だけを人工関節と入れ替えます。患者さん自身の骨や関節を残せるので違和感が少なく、体への負担も少し軽くなります。
しかし、切除する骨の量も少なくし、靭帯バランスを取りながら温存するので、その分手術の難易度は上がります。手術時間は1時間~1時間半です。
●人工膝関節全置換術(TKA)
関節全体を人工物に入れ替える手術です。膝関節の表面すべてが人工物に代わることから、体への負担がやや大きくなります。切除する骨の量がUKAに比べて多く、筋肉を切開する量も増える分、出血量も増えて手術時間もかかるため、体への侵襲が大きくなります。手術時間は2時間ほどです。
「人工関節」は、まれに合併症や血栓を生じるリスク
いずれの人工膝関節置換術も全身麻酔で行われ、硬膜外麻酔を併用するケースもあります。入院期間は3~4週間ほどですが、術後は可能な限り早い段階でリハビリを開始し、1週間ほどで杖を使用しての歩行が可能となります。
人工の関節と置き換えることで、自身の骨どうしがぶつかり合うことがなくなり、関節の変形も改善されて痛みの大きな緩和が期待できます。膝関節の動きもスムーズになり、以前のような生活を送れるほどに回復します。
ただ、人工関節には合併症のリスクを伴います。手術時に切開することから、稀なケースではありますが細菌感染が起こります。創部からの感染や、術後に膀胱炎や歯槽膿漏などの細菌が体力や免疫力が低下したときに血管の中に入り、人工関節に付着して感染を引き起こします。重症化すると人工関節を取り外して入れ直す再置換手術を行うこともあります。
また、手術中は体を動かすことができないため、重力によって脚の下のほうに血液が溜まりやすく、それが塊となって血栓が生じ、血管を詰まらせるなどの重篤な症状を引き起こすことがあります。
人工膝関節置換術に限らず手術にはリスクを伴いますので、不安や疑問があるときは医師に説明を求め、納得して手術を受けることが大切です。
松田 芳和
まつだ整形外科クリニック 院長
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