温熱や電気、レーザーで痛みを和らげる「物理療法」
物理療法とは、温熱、電気、光線(赤外線・レーザーなど)といった物理的な刺激を患部に加えることで、血流の改善、炎症や疼痛(とうつう〔ズキズキする痛み〕)の緩和、関節や筋肉の柔軟性の向上を目的に行う治療法をいいます。
急性の痛みのときには患部を冷やすのが基本ですが、膝関節の軟骨がすり減っていき、膝関節がしだいに変形していく「変形性膝関節症」の場合は慢性的な痛みのため、ひざを温める方法をとります。これによってひざの血行が良くなることで発痛物質が除去されて痛みが和らいだり、関節や筋肉を動かしやすくなります。
また、物理療法を受けていると気持ち良くなることから、心理的なリラクゼーション効果も期待されています。
●温熱療法
患部を温めることで関節や筋肉の硬さをほぐし、収縮した血管を緩めて血行を良くします。これには、80℃前後に温めたパックをタオルで包んで患部に当てるホットパックなどがあります。
しかし、この方法では体の表面を温めることはできても、深部まで温めることはできません。また、患部が炎症を起こしているときには、温めることで痛みが増す場合があるので注意が必要です。
●電気刺激療法
ひざ周囲の筋肉に電気を流し、筋肉の収縮による血行改善で痛みを和らげます。これには超音波、低周波、干渉波などを患部に当てる方法があります。
●光線療法
痛みのある部分にレーザーや遠赤外線を照射して痛みを鎮めます。
ひざの負担を分散させる「装具療法」
変形性膝関節症の患者さんの多くは、内側か外側のどちらか一方の軟骨がすり減っており、O脚やX脚になっています。このような状態では、体重や日常の動作でかかる荷重によって内外どちらか一方の軟骨がすり減りやすくなるので、さらに変形性膝関節症が悪化していきます。
そこで、体重が伝わる軸を補正し、ひざにかかる負担を分散させることでひざを安定させ、痛みの軽減を図る目的で装具を用いた装具療法を行うことがあります。
これにはひざの動きを安定させるひざ装具やサポーターなどがありますが、効果的でよく用いられるのは「足底板(そくていばん)」を使った方法です。足底板とは、傾斜をつけてひざにかかる負荷を調整する靴の中敷きに似た医療装具のことで、インソールともいわれています。
例えば、O脚になってきた場合はひざの内側の軟骨がすり減っていくため、バランス良く体重を支えられるように、足の外側が厚くなっているインソールを使用します。これによって体重が内側の膝関節にかかるのを防いでひざにかかる重心軸のズレが改善するので、ひざに負担をかけない歩き方ができるようになります。
このインソールは変形性膝関節症に用いられるだけではなく、体のバランスを整えることからパフォーマンスが上がるとしてトップアスリートも使用しています。
インソールは変形性膝関節症の初期や中期に限らず、末期でも手術ができる状況ではなかったり、受けたくなかったりする患者さんは試していることが多く見られます。
インソールは市販のものもありますが、足の形状や負担が集中している部位は人によって異なります。自分の特性に合ったインソールを使わなければ効果を得られないばかりか、逆にひざを痛めることもあります。そのため、ひざのことを熟知している資格をもった専門家に、自分の足と靴に合ったオーダーメイドのインソールをつくってもらうことが大切です。インソールを希望する場合は自己判断で使用せず、医師や理学療法士に相談して信頼できる専門家につくってもらうようにしましょう。
ちなみに私のクリニックでは、入谷式インソールを使用しています。インソールは靴の形によって違ってくるため、1つをつくって別の靴に入れ替えるといった使い回しはできません。