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肥満がもたらす「ひざの痛み・腫れ」の悪循環
変形性膝関節症などひざを痛める原因の一つに挙げられるのが肥満です。体重が重いと、ひざにより大きな負担がかかり、症状を誘発する→ひざ痛が現れる→痛みのために動くのが億劫になる→運動量が減る→ますます体重が増加する…という悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切ってひざを良い状態に保つためにも減量は欠かせません。
実際に、患者さんが体重を落としただけでひざ痛や腫れなどが軽減しているケースを、私も診療を通してよく目の当たりにしています。
まず、自分の体重が適正であるかどうかを把握する必要があります。自分にとって適正な体重の割り出し方を覚えておくと良いでしょう。これは、BMI(体格指数)と呼ばれる数値を利用しており、肥満や痩せを判定する基準として広く用いられています。
BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求められます。
このBMIが25を超えると肥満と診断され、男女とも22のときが最も健康で病気になりにくい適正体重といわれています。
そこで、BMIが22となる体重が理想とされ、適正体重=22×[身長(m)の2乗]で求められます。
「いつもの間食」をやめるだけでもダイエット効果あり
では、なぜ体重が増えるのかといえば、消費するエネルギー量よりも多いエネルギーを摂取しているからです。つまり、運動などによってエネルギーを燃やしきれないほどの量を食べていることになるのです。これが給料なら支出よりも多くの収入があるわけですから貯金が増えて嬉しい話ですが、体重は喜べません。
ですから、減量するには摂取エネルギー量より消費エネルギー量を多くすること。そこで、ウォーキングなどの運動が必要なのですが、すべてを運動で消費するのはアスリートでなければ難しいと思われます。
肥満ぎみの人にありがちなこととして、「そんなに食べていない」と言いながら、試しに記録していただくと、かなりの量を食べているケースが多いのです。なかには間食が習慣化している人もいますので、それを止めるだけでも減量につながります。
一見「健康意識が高い」ようでいて、実は危険な食生活
運動と同じくらい重要なのが食生活です。患者さんの話を聞いていると、「筋肉を落とさないようにタンパク質をいっぱい摂っている」とか、「骨を丈夫にするためにカルシウムを積極的に摂っている」「糖質(炭水化物)は生活習慣病のもとだから食べないようにしている」などと、健康に気を使っている様子がうかがえます。
これらは一見、体に良いように思えますが、栄養の偏りは逆に健康を害することもあるのです。
例えば、ご飯などの炭水化物を摂らずにタンパク質を中心としたおかずばかりを食べていると、かえって栄養過多になり肝臓や腎臓に負担をかけることとなります。
また、カルシウムを摂りすぎると、高カルシウム血症といって血液中のカルシウム濃度が高くなり、脱力感や疲れやすくなるなどの症状が現れるようになります。
「栄養バランスを整えること」が重要
大事なことは、必要な栄養素が過不足なく摂れているバランスの良い食事です。
栄養とは、食事から摂取した栄養素を原料にして消化・吸収、さらに代謝することによって生命を維持し、成長に必要な成分をつくるといった一連の流れをいいます。栄養素は、食べ物に含まれているさまざまな物質のうち、人体に必要不可欠な成分で次のような働きをしています。
1.エネルギー源になる
2.体の組織(筋肉、血液、骨など)をつくる
3.体の調子を整える
エネルギー源になる栄養素には、糖質・タンパク質・脂質があり、これを3大栄養素といいます。これらに微量元素であるビタミン・ミネラルを加えたものを5大栄養素といい、これも体にとって必要な栄養素です。3大栄養素は、主に体内でエネルギー源や体の組織をつくる働きをし、ビタミン・ミネラルは体の調子を整える働きをしています。
これらが揃っていると、栄養バランスの良い食事といえます。理想とされている献立は、ご飯など穀類の「主食」を基本に、肉や魚、卵、大豆などのタンパク質をメインとした「主菜」であるおかず、野菜、きのこ、海藻など食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富な「副菜」、そして「汁物」を組み合わせた和食です。
近年、世界的にも和食が注目されているのは、栄養バランスの整った健康食だからではないでしょうか。
松田 芳和
まつだ整形外科クリニック 院長
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